グレゴール・ギジ

グレゴール・ギージ：波乱万丈な政治家人生

グレゴール・フローリアーン・ギージ（Gregor Florian Gysi）は、1948年1月16日生まれのドイツの政治家であり、左翼党に所属しています。彼は、東ドイツ（ドイツ民主共和国）の支配政党であったドイツ社会主義統一党（SED）が改組して結成された民主社会党（PDS）の初代議長（党首）を務めました。ミハイル・ゴルバチョフとユーロコミュニズムの影響を受けており、社会主義統一党内では改革派に属していました。

生い立ちと経歴

東ベルリンで生まれたギージは、ユダヤ人の血を引く家系に育ちました。彼の家族は代々共産主義活動に熱心であり、父クラウス・ギージは東ドイツで大使や文化大臣などを歴任しました。また、母方の伯父はイギリス人作家ドリス・レッシングと結婚しており、彼女は2007年にノーベル文学賞を受賞しています。

ギージは1969年にドイツ社会主義統一党（SED）に入党し、1970年にベルリン大学で法学を修了しました。その後、弁護士として活動し、東ドイツの数少ない自由派弁護士として、反体制派や西側への亡命希望者の弁護を担当しました。1988年には、ベルリン弁護士協会及び東ドイツ弁護士協会の会長に就任しています。

東欧革命とドイツ統一

1989年の東欧革命のさなか、東ドイツでもデモや集会が頻発するようになります。ギージは旅行法改正要求運動で注目を集め、11月4日のベルリン・アレクサンダー広場における50万人デモでは、群衆の前で演壇に立ち、政府に選挙法改正や憲法裁判所設置を要求しました。その弁舌と理論でメディアの寵児となり、SED臨時党大会の準備委員に就任。さらに12月9日にはSED議長に選出され、党名を社会主義統一民主社会党（SED/PDS）に改名しました。

1990年3月の初の自由選挙で人民議会議員に当選。東西両ドイツによる通貨同盟条約を批判し、西による東の吸収ではなく、統一後の両国に新憲法制定を定めたドイツ連邦共和国基本法第146条による統一を要求しました。10月3日の東西ドイツ再統一後は、そのままドイツ連邦議会議員となっています。

PDS・左翼党での活動

1993年1月31日までPDS党首を務めた後、旧東ドイツの情報機関シュタージ（国家保安省）の非公式協力者（IM）として働いていたという疑惑が取りざたされました。2005年には左翼党・PDSの候補として連邦議会選挙に出馬し当選。2007年には、左翼党・PDSと「労働と社会的公正のための選挙オルタナティブ」（WASG）が合一して左翼党となり、ギージは議員団長を務めました。

2013年には最大野党を率いる野党代表となりましたが、2015年に議員団長を辞任。2017年の連邦議会選挙では比例区での重複立候補を避け、小選挙区単独で当選を果たしています。

シュタージへの協力疑惑

ギージは長年にわたり、シュタージへの協力疑惑に苦しめられました。1998年には、連邦議会の調査委員会が、ギージが1975年から1989年にかけてシュタージに協力していたと結論付けました。しかし、ギージはこれを認めず、証拠や手続きに不備があったため、PDSだけでなく連立与党の自由民主党（FDP）も調査報告書に賛成票を投じませんでした。その後も疑惑が取り上げられましたが、証拠不十分を理由に審理は停止されました。

語録

ギージは数々の印象的な語録を残しています。

「教育費は高価かもしれない。しかし少年院はもっと高価だ」
「左翼というものは貧困である必要はなく、貧困と対決する者であるべきだ」
* 「経済の目的とは万人の福祉であるべきだ」

これらの言葉は、彼の政治哲学と社会に対する考え方を明確に表しています。

グレゴール・ギージは、東ドイツの民主化とドイツ統一後の政治において重要な役割を果たした人物です。シュタージ協力疑惑など、様々な困難に直面しながらも、彼は政治家として、そして弁護士として、独自の道を歩み続けています。

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