ユーロコミュニズム

ユーロコミュニズムの概要

ユーロコミュニズム（Eurocommunism）は、1970年代に西ヨーロッパ、特にフランス、イタリア、スペインの共産党で形成された共産主義の新たな潮流です。これは、国際共産主義の多様化と中ソ対立の影響を受け、従来の暴力革命やプロレタリア独裁、民主集中制を否定し、全く異なる方向性を追求する運動として浮上しました。

政治的背景と発展

ユーロコミュニズムは、特にソ連との距離を置くことで知られています。これに伴い、プロレタリア独裁を放棄し、多党制や民主主義の強化を目的とした政策を明言しました。フランス共産党は1968年に「先進的民主主義」の理念を打ち出し、社会主義への道を進むための具体的な政治戦略を宣言しました。この流れの中で、1972年にはフランス社会党との間で共同政府を目指す協定を結びましたが、その後の交渉は決裂し、共闘の計画は実現しませんでした。

イタリア共産党でも同様の動きがありました。1975年の党大会でエンリコ・ベルリンゲル書記長が提案した歴史的妥協は、与党のキリスト教民主党との連携による権力獲得を目指しました。彼らは当時の政治状況を踏まえ、北大西洋条約機構（NATO）からの離脱という従来の方針を放棄し、実際には1976年の総選挙で大きな得票率を得るものの、政権獲得には至りませんでした。1991年には党名を「左翼民主党」に変更し、社会民主主義の潮流に沿った政治姿勢を取るようになりました。

スペインにおけるユーロコミュニズム

スペイン共産党の活動もユーロコミュニズムの一環とされます。モンクロア協定はその象徴的な事例であり、これにより共産党は政治における影響力を再構築しようとしました。1970年代後半のこの時期、日本共産党も一時的に「ユーロ・ニッポ・コミュニズム」と呼ばれる潮流に身を置いたりしましたが、基本的には西欧諸国とは異なる立場を取ってきました。

日本共産党の反応

日本共産党は、ウエスの共産党がNATOを受け入れる態度に対し強く批判し、ユーロコミュニズムから一線を画しています。冷戦終了後も、党規則として異なる意見の共存を認めないため、党内には一貫した方針が存在します。このため、ユーロコミュニズムとは基本的に異なる路線を取っており、派閥や多様な思想の存在が厳しく禁じられています。

まとめ

ユーロコミュニズムは、特に西ヨーロッパでの共産主義の進化を象徴する運動であり、従来の革新的な方針から離れ、より民主的な政党の在り方を模索した結果生じた流れです。この潮流は、単なるイデオロギーの再構築に留まらず、政治戦略や政党間の協力体制にも影響を与えました。日本共産党が取っている立場は、そのような流れとは別の独自の進路を辿るものであり、ユーロコミュニズムへの参加を常に拒否してきました。

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