通貨同盟

通貨同盟とは

通貨同盟（英: currency union）とは、複数の国が単一の通貨を共有することで合意している状態を指します。これは通貨統合とも呼ばれ、参加国間での為替レートの変動リスクをなくし、貿易や投資を促進する効果が期待できます。しかし、通貨同盟は単に通貨を統合するだけでなく、経済政策の協調や、経済構造の類似性など、多くの条件が成功のために必要となります。

最適通貨圏の条件

通貨同盟が円滑に機能し、経済的なメリットを最大化するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの条件は、「最適通貨圏」と呼ばれる概念で議論されます。

経済構造の類似性: 参加国間の経済構造が似通っているほど、外的ショックの影響が共通化しやすくなり、通貨同盟は安定します。
生産要素の自由な移動: 資本や労働者などの生産要素が自由に移動できることは、経済的な不均衡を調整し、通貨同盟の効果を高めます。
価格と賃金の伸縮性: 価格と賃金が市場の需要と供給に応じて柔軟に変動することが、経済ショックへの対応力を高めます。
金融市場の統合: 金融市場が統合されていることは、資本の円滑な移動を促進し、通貨同盟の安定に寄与します。
政策協調: 参加国が財政政策や金融政策で協調できることが、通貨同盟全体の安定を保つ上で重要です。

これらの条件が満たされない場合、通貨同盟は経済的な混乱を招く可能性もあります。

現存する通貨同盟

世界には、複数の国が共通の通貨を使用している例がいくつかあります。

中部アフリカ・CFAフラン: カメルーン、中央アフリカ、チャドなど、中部アフリカ経済通貨共同体 (CEMAC) 加盟国で使用されています。
西部アフリカ・CFAフラン: ベナン、ブルキナファソなど、西アフリカ経済通貨同盟 (UEMOA) 加盟国で使用されています。
CFPフラン: フランス領ポリネシア、ニューカレドニアなどのフランスの海外領土で使用されています。
東カリブ・ドル: アンギラ、アンティグア・バーブーダなど、東カリブ諸国機構 (OECS) 加盟国で使用されています。
ユーロ: EU加盟国を中心に、アンドラ、モナコ、サンマリノ、バチカンで使用されています。また、モンテネグロ、コソボでは事実上の法定通貨として使用されています。

事実上の通貨同盟

公式な合意に基づかないものの、特定の通貨が複数の国や地域で広く使用されているケースもあります。

アルメニア・ドラム: アルメニアと、事実上の独立状態にあるアルツァフ共和国で使用されています。
オーストラリア・ドル: オーストラリア、キリバス、ナウル、ツバルで使用されています。
UKポンド: イギリスとその周辺地域、一部の海外領土で使用されています。
ブルネイ・ドルとシンガポール・ドル: ブルネイとシンガポールで相互に法定通貨として認められています。
ユーロ: コソボとモンテネグロでは、事実上の法定通貨として使用されています。
香港ドル: 香港とマカオで、マカオパタカにペッグされて使用されています。
インド・ルピー: インドとブータンで使用されています。また、ネパールでも一部利用されています。
ニュージーランド・ドル: ニュージーランドとその周辺地域で使用されています。
イスラエル・新シェケル: パレスチナ自治区で使用されています。ヨルダン川西岸ではヨルダン・ディナールも使用されています。
ロシア・ルーブル: ロシアと、ジョージアの自治領であるアブハジア、南オセチアで使用されています。
南アフリカランド: 南アフリカ、スワジランド、レソト、ナミビアで使用されています。
スイス・フラン: スイスとリヒテンシュタインで使用されています。
トルコ・新リラ: トルコと、事実上の独立状態にある北キプロス・トルコ共和国で使用されています。
アメリカ・ドル: アメリカ合衆国とその周辺地域、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、パナマ、エクア[[ドル]]、エルサルバ[[ドル]]、東ティモール、イギリス領ヴァージン諸島、タークス・カイコス諸島で使用されています。パナマではパナマ・バルボアと併用されています。

計画中の通貨同盟

いくつかの地域では、将来的な通貨同盟の実現に向けた動きがあります。

東アフリカ共同体 (EAC): 東アフリカ・シリングの導入を計画しています。
スクレ: 米州ボリバル同盟 (ALBA) で計画されている地域通貨です。
湾岸協力会議 (GCC): 湾岸共通通貨の導入を計画していましたが、実現していません。
カリブ共同体 (CARICOM): カリブ単一市場経済 (CSME) での通貨統合を計画していましたが、実現していません。
ロシア・ベラルーシ連盟国: 通貨統合を計画していましたが、実現していません。
南部アフリカ開発共同体 (SADC): 南部アフリカ関税同盟 (SACU) での通貨統合を計画していましたが、実現していません。
南アジア地域協力連合: 通貨統合を計画していましたが、実現していません。
南米共同体 (Unasur/Unasul): 通貨統合を計画していましたが、実現していません。
西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS): 域内での単一通貨エコの導入を計画しています。
東南部アフリカ共同市場: 通貨統合を計画しています。
アフリカ経済共同体: 通貨統合を計画しています。

提唱されている通貨同盟

通貨同盟の実現に向けた構想や提言も存在します。

アジア通貨単位: 東南アジア諸国連合 (ASEAN) 、中華人民共和国、日本、大韓民国での通貨統合が提唱されています。
北米連合: カナダ、アメリカ合衆国、メキシコによる単一通貨アメロの導入が提唱されています。
オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア: これら3カ国での通貨統合が提唱されています。
アフリカ中央銀行: アフリカ連合によるアフリカ合衆国誕生構想の中で、共通通貨構想が提唱されています。

かつて存在した通貨同盟

過去には、現在とは異なる通貨同盟が多数存在しました。

バーレーン・ディナール: バーレーンとアブダビで使用されていました。
湾岸ルピー: バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、休戦諸国（のちのアラブ[[首長国連邦]]）で使用されていました。
インド・ルピー: アデン、南アラビア連邦、バーレーン、ケニア、クウェート、オマーン、イギリス領ソマリランド、休戦諸国、ウガンダ、ザンビア、イギリス領インド帝国（のちにインドとして独立）で使用されていました。
ベルギー・ルクセンブルク通貨同盟: ベルギーとルクセンブルクで使用されていました。
チェコスロバキア・コルナ: チェコとスロバキアで使用されていました。
エチオピア・ブル: エチオピアとエリトリアで使用されていました。
フランス・フラン: フランス、モナコ、アンドラで使用されていました。
東カリブ・ドル: 東カリブ諸国機構、バルバドス、トリニダード・トバゴ、イギリス領ギアナで使用されていました。
イタリア・リラ: イタリア、バチカン、サンマリノで使用されていました。
ポンド・スターリング: アイルランドとイギリスで使用されていましたが、アイルランドが欧州[[通貨制度]]に参加したことで解消されました。
ジャマイカ・ポンド、ジャマイカ・ドル: ジャマイカとケイマン諸島で使用されていました。
英領東アフリカ・ルピー: ケニア、ウガンダ、ザンビアで使用されていました。
東アフリカ・フローリン: ケニア、ウガンダ、ザンビア（のちにタンガニーカも加わる）で使用されていました。
東アフリカ・シリング: ケニア、タンガニーカおよびザンジバル（両国はのちに統合してタンザニアとなる）、ウガンダ、南アラビア連邦、イギリス領ソマリランド、イタリア領ソマリランドで使用されていました。
ラテン通貨同盟: ヨーロッパの複数の国で使用されていました。
アメリカ・ドル: リベリアとアメリカで使用されていました。
モーリシャス・ルピー: モーリシャス、セイシェルで使用されていました。
西アフリカ・ポンド: ナイジェリア、ガンビア、シエラレオネ、英領ゴールド・コースト、リベリアで使用されていました。
北ゲルマン・ターラー（プロイセン・ターラー）: ドイツ北部で使用されていました。
ルーブル圏諸国: 旧ソ連圏で使用されていました。
カタール・ドバイ・リヤル: カタールとアブダビ以外のアラブ[[首長国連邦]]を構成する首長国が使用していました。
サウジアラビア・リヤル: サウジアラビアとカタールで使用されていました。
ニュージーランド・ドル: サモアとニュージーランドで使用されていました。
スカンディナヴィア通貨同盟: デンマーク、ノルウェーとスウェーデンで使用されていました。
オーストラリア・ドル: ソロモン諸島、パプアニューギニア、オーストラリアで使用されていました。
南ゲルマン・ギルダー: ドイツ南部で使用されていました。
スペイン・ペセタ: スペインとアンドラで使用されていました。
マレーシアとシンガポール: 1970年代初頭まで通貨同盟を形成していました。
南アフリカ・ランド: 南アフリカ共和国とボツワナで1966年から1976年にかけて使用されていました。
* エジプト・ポンド: エジプトとスーダンで1956年まで使用されていました。

これらの過去の通貨同盟の事例は、通貨同盟の成功や失敗の要因を分析する上で重要な教訓を与えてくれます。

通貨同盟は、経済統合の重要な側面であり、今後もその動向が注目されます。

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