グレートスラッガーズ NEWワールドスタジアム

『グレートスラッガーズ NEWワールドスタジアム』（GREAT SLUGGERS NEW WORLD STADIUM）は、1993年11月に株式会社ナムコ（現在の株式会社バンダイナムコエンターテインメント）がアーケード向けにリリースした野球ゲーム作品です。本作は、同社が長年にわたり展開してきた野球ゲームシリーズの新たな試みとして位置づけられています。翌1994年には、内容が異なる続編『グレートスラッガーズ'94』（GREAT SLUGGERS Featurling 1994 Team Rosters）が日本と北米でそれぞれ発売されました。

シリーズの変遷と本作の登場

ナムコの野球ゲームは、1986年の家庭用ゲーム機ソフト『プロ野球ファミリースタジアム』（ファミスタ）を皮切りに看板シリーズへと成長しました。アーケードへの展開は1988年の『プロ野球ワールドスタジアム』から始まり、1991年から1993年にかけては『SUPERワールドスタジアム』（SWS）シリーズが稼働していました。本作『グレートスラッガーズ NEWワールドスタジアム』は、このSWSシリーズの後継作品にあたります。

しかし、最大の変更点として、従来のアーケード版を含むファミスタシリーズの象徴であった、選手の体型がデフォルメされたモデルから離れ、八頭身のリアルな体型を持つ選手モデルが採用されました。これは、使用基板を前作までのSYSTEM IIからNB-1 SYSTEMへ刷新したことに伴うものであり、グラフィック面で写実的な路線へと大胆な転換を図った意欲作と言えます。作品名に「NEW WORLD STADIUM」という副題が冠されているのは、アーケードにおけるワールドスタジアムシリーズの系譜を受け継いでいることを示すためであり、シリーズ全体の中ではスピンオフ的な位置づけとされることもあります。

ゲーム内容と収録データ

1993年版の第一作目では、前作『SWS'93激闘版』と同様に日本野球機構（NPB）の許諾を得て、実在する12球団と所属選手が実名で登場しました。家庭用ファミスタシリーズでおなじみのナムコスターズのようなオリジナルチームは含まれていません。

続編である『グレートスラッガーズ'94』の日本版も、引き続きNPB公認作品として、1994年シーズン途中の選手データが反映されています。一方、北米版では題材がメジャーリーグベースボール（MLB）に変更され、1994年シーズン途中のMLB全28球団と所属選手が実名で収録されました。メッセージ表示も全て英語に対応し、北米市場向けのローカライズが徹底されています。

システムの特徴

本作では、前作SWSシリーズと比較して、試合開始前に設定可能な項目が拡充されています。プレイヤーは以下の項目を選択できるようになりました。

先攻・後攻の決定
指名打者（DH）制の有無
守備操作モード（内野と外野それぞれでマニュアルまたはオートを選択可能）
打順の組み換え（スターティングメンバー内での変更のみ）
BGMモード（熱戦モードまたは通常のBGMモード）
試合を行う球場

また、前作『SWS'92激闘版』で導入された、特定球団を有利にする「特別仕様モード」の設定も引き続き可能です。

登場する球場

1993年版では、以下の4種類の球場を選択できました。これらの球場の一部データはSWSシリーズから流用されています。

ヒルサイド: 西武ライオンズ球場がモデルの人工芝球場。
トラッド: 阪神甲子園球場がモデル。内野が土、外野が天然芝。前作までの「こーしえん」を引き継いでいます。
アーバン: 明治神宮野球場がモデルの人工芝球場。
開閉ドーム: 福岡ドームがモデルの人工芝球場。

北米版『グレートスラッガーズ'94』で選択できる球場は以下の2種類です。

Traditional: 初代ヤンキー・スタジアムがモデルの天然芝球場。
Modern: 『開閉ドーム』と同じ球場。

サウンド

ゲームBGMは相原隆行氏と石川隆之氏が担当しました。特に「熱戦モード」を選択した場合、共通のBGMではなく、多くの球団でそれぞれの球団歌や公式応援歌が演奏される演出がありました（ただし、ヤクルトスワローズは球団歌ではなく『東京音頭』が使用されています）。ゲームサウンドは1995年にアルバムCDとしても発売されています（『ナムコ・ゲームサウンド・エクスプレスVol.21 グレートスラッガーズ』、VICL-15045）。

シリーズにおける位置づけとその後のリアル路線

本作で試みられた八頭身のリアル路線は、アーケード版ワールドスタジアムシリーズにおいては短命に終わり、1995年以降は再びデフォルメ体型のSWSシリーズへと回帰しました。

しかし、リアル路線への挑戦が完全に途絶えたわけではなく、本作から8年後の2002年には、フジテレビとのタイアップによるリアル志向の野球ゲーム『熱チュー!プロ野球2002』がアーケードおよびPlayStation 2向けに登場しました。この作品は、ナムコおよびその後のバンダイナムコゲームスがアーケードで開発した最後の野球ゲームであり、本作の「特別仕様モード」に類似した機能も搭載されていました。家庭用ゲーム機では、『熱チュー!プロ野球』シリーズや、その後継となる『プロ野球熱スタ』シリーズとしてリアル路線は継続されましたが、『熱スタ2007』を最後に、同社からのリアル系野球ゲームのリリースは現在のところありません。

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