グロムス門

グロムス門とは

グロムス門（学名: Glomeromycota）は、菌界に属する門の一つであり、約50属340種が知られています。この菌類は、植物と共生関係を築くことが最大の特徴で、特にアーバスキュラー菌[[根]]という形で維管束植物の約80%と共生しています。グロムス類は、隔壁を持たない無隔菌糸を形成し、大きな厚壁胞子による無性生殖を行います。しかし、有性生殖についてはまだ解明されていません。

グロムス門の特徴

グロムス類は、菌糸を形成し、菌糸はほとんど隔壁を持たない無隔菌糸です。菌糸の太さは通常2〜10µm程度ですが、最大で20µmに達するものもいます。菌糸はトリパンブルーなどの色素で染色可能です。

ほとんどの種では、菌糸が植物の根に侵入し、アーバスキュラー菌[[根]]を形成します。菌糸の一部が植物細胞内に侵入し、樹枝状体（アーバスキュル）を形成して、植物との間で栄養交換を行います。また、菌糸は細胞内で嚢状体（ベシクル）という栄養貯蔵構造も形成します。例外として、ゲオシフォンは植物の根ではなく、シアノバクテリアと共生し、光合成によって栄養を得ています。

グロムス類の細胞内には細菌が共生しており、これをendohypal bacteria (EHB)と呼びます。これらの細菌はグロムス類の生育を助け、菌根形成を効率化する役割があると考えられています。主な共生細菌として、Candidatus Glomeribacter gigasporarumとMollicutes類が知られています。

グロムス門の生殖

グロムス類は、厚壁胞子という大きな胞子によって無性生殖を行います。厚壁胞子は、菌糸の先端や菌根内に形成され、その形状や壁の構造は種によって多様です。厚壁胞子の形成様式は、グロムス型、ギガスポラ型、アカウロスポラ型、エントロフォスポラ型に分類され、分類上の重要な特徴となっています。

一部の種では、厚壁胞子が集まって胞子果を形成することがあります。胞子果は、土壌中で胞子を散布する役割を担っています。胞子は、発芽管を伸ばして植物の根に侵入し、菌根を形成します。グロムス類では有性生殖は確認されていませんが、ゲノムには減数分裂に関わる遺伝子が存在することがわかっています。

グロムス門の生態

グロムス類は、生きた生物から栄養を得る活物栄養性であり、共生なしでは生存できない絶対共生性です。ゲノム解析により、グロムス類が脂肪酸合成に関わる遺伝子を持たないことが判明しており、共生相手から脂肪酸を得る必要があると考えられています。

ほとんどのグロムス類は、維管束植物の根と共生してアーバスキュラー菌[[根]]を形成します。アーバスキュラー菌[[根]]は、植物の栄養吸収を助け、植物の生育を促進します。グロムス類は、植物から有機物（糖や脂質）を受け取り、植物には無機栄養分（特にリン）や水を提供します。また、グロムス類の菌糸は土壌中でネットワークを形成し、異なる植物間で栄養をやり取りすることもあります。

人間との関わり

グロムス類が形成するアーバスキュラー菌[[根]]は、農作物の生育に重要な役割を果たします。そのため、グロムス類を農業に利用する研究が進められています。特にRhizophagus irregularisはモデル生物として広く利用されており、特定の脂肪酸を加えることで純粋培養が可能になったことが報告されています。

グロムス門の系統と分類

グロムス類は、かつては接合菌のアツギケカビ科に分類されていましたが、分子系統学的研究の結果、独立の門として扱われるようになりました。しかし、近年の研究では、ケカビ門に属する可能性も指摘されており、グロムス亜門として分類されることもあります。

グロムス門は、厚壁胞子の形態や形成様式、分子形質などに基づいて分類されています。しかし、種内での遺伝的多様性が大きいため、分類は非常に複雑です。現在では3綱、6目、17科に分類されることが多いですが、分類体系は研究者によって異なる場合があります。

まとめ

グロムス門は、陸上植物と密接な関係を持つ菌類であり、植物の生育に欠かせない存在です。アーバスキュラー菌[[根]]を通じて、植物の栄養吸収を助け、生態系における重要な役割を担っています。グロムス類の多様な生態や分類を理解することは、生態系全体の理解に不可欠です。

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