グローバルグリーンズ憲章

「グローバルグリーンズ憲章」は、環境保護を主要な政策課題とする世界の政党、いわゆる「緑の党」の国際的ネットワークであるグローバルグリーンズが採択した、彼らの活動の基盤となる基本的な規範です。

この憲章は、2001年にオーストラリアの首都キャンベラで開催された第一回グローバルグリーンズ会議において、約70カ国以上から集まった800名を超える各国の緑の党代表者によって制定されました。制定の背景には、地球規模で進行する環境破壊や社会的不公正に対し、個別の国レベルの活動だけでは不十分であり、国境を越えた連携と共通の理念に基づいた行動が必要であるという認識がありました。その最大の目的は、環境保護を政策の柱に据える各国の緑の党間の協力関係を深め、より効果的な政治活動を世界規模で展開するための共通の指針を示すことにあります。

この憲章は、緑の政治運動が共有すべき核となる価値観と目標として、以下の六つの柱を明確に掲げています。

エコロジカルな知恵 (ecological wisdom): 地球上の生命と生態系に対する深い理解に基づき、人間活動が生態系に与える影響を最小限に抑える知恵。自然の有限性を認識し、環境倫理を重視した持続可能な社会の構築を目指します。
社会正義 (social justice): すべての人々が公正かつ平等に扱われ、貧困、格差、差別のない社会の実現を目指します。環境問題はしばしば社会的不公正と結びついているという認識に基づき、弱者の権利保護と世代間の公平性を重視します。
参加型民主主義 (participatory democracy): 市民が政治的意思決定プロセスに積極的に関与できる仕組みを強化し、情報公開を徹底することで、透明性の高い開かれた政治を実現します。権力の集中を避け、地方分権を推進し、市民のエンパワーメントを図ります。
非暴力 (nonviolence): あらゆる形態の暴力に反対し、対話と平和的な手段による紛争解決を追求します。軍事主義を否定し、軍事費を削減して社会福祉や環境保護に投資することを目指します。平和な国際秩序の構築を理想とします。
持続可能性 (sustainability): 現在の世代のニーズを満たしつつ、将来世代がそのニーズを満たす能力を損なわないような、環境、社会、経済が調和したあり方を追求します。再生可能エネルギーへの転換、資源の効率的な利用、循環型経済の構築を重視します。
多様性の尊重 (respect for diversity): 生物多様性の保全はもちろんのこと、文化、民族、性別、性的指向、宗教、信条など、人間社会におけるあらゆる多様性を認め、尊重します。異なる価値観や生き方を持つ人々が共存できる、包容力のある社会の実現を目指します。

これらの六つの目標は相互に関連しており、緑の政治運動の包括的なアプローチを示しています。制定後、グローバルグリーンズ憲章は世界の環境政治運動において重要な役割を果たしてきました。時代とともに変化する世界の状況や新たな課題に対応するため、2012年には西アフリカのセネガル共和国の首都ダカールにおいて開催された第三回グローバルグリーンズ会議にて、憲章の内容が見直され、改正が行われました。この改正は、緑の党の国際連携が常に進化し、より実効性のある活動を目指す姿勢を示すものです。

グローバルグリーンズ憲章は、単なる理念の表明に留まらず、世界各地の緑の党が具体的な政策を立案し、政治活動を展開する上での基礎となる文書です。緑の政治という理念を世界規模で共有し、実践していくための、まさに羅針盤とも言える存在です。その内容は、環境問題だけでなく、人権、社会正義、平和といった現代社会の根幹に関わる課題を網羅しており、持続可能で公正な世界の実現を目指す緑の政治の精神を集約しています。

関連概念として「緑の政治'>緑の政治」が挙げられます。

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