社会正義

社会正義とは

社会正義（しゃかいせいぎ、英: social justice）という概念は、社会において公平な取り扱いや権利の保障を追求するものです。これは、社会が共有する価値観に基づき、正当な権利の行使と義務の履行を促す理念であり、法の下での平等や同一労働同一賃金など具体的な例を通じて理解できます。社会的公正とも呼ばれるこの概念は、古くから存在していた思想であり、近代において特に重要視されるようになりました。

概要

社会正義の思想は騎士道や他の文化的文脈の中にも見られますが、18世紀末において、アメリカの『ザ・フェデラリスト』やエドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』において、その概念がより明確に表現されました。19世紀末、ローマ教皇レオ13世はカトリック教会に対し、「レールム・ノヴァールム」と題した回勅を発表し、労働者の権利を守るための教えを広めました。この回勅は、労働者が資本主義の中で直面する搾取の危険について警告を発したものです。

社会正義の理念は、単に個人の権利を擁護するだけでなく、さまざまな側面から人権や平等の追求を目指しています。例えば、累進課税制度や富の再分配を通じて、平等な機会の提供を図ることも含まれます。また、腐敗や金権政治といった不正を非難し、真の公正を求める風潮が盛んに見られます。

特に近年では、哲学者ジョン・ロールズが『正義論』の中で社会正義の概念を大幅に拡展し、環境問題へのアプローチも含めて議論を深めています。多くの国で緑の党は、ロールズの考えに影響を受け、社会正義の視点から持続可能な社会の実現を目指しています。国際労働機関も社会正義を「普遍的で恒久的な平和」に欠かせない原则として掲げており、ウィーン宣言にもその重要性が示されています。

現実社会における展開

社会正義は、資本主義への批判的視点を持つ福祉国家の概念とも結びついていますが、必ずしも大きな政府を求めるものではありません。社会主義や社会民主主義といった思想との関連がある一方で、社会自由主義や宗教的価値観など、さまざまな立場がこの概念を支持しています。保守的な立場からも、人権の重要性や道徳の維持といった観点で社会正義が強調されることがあります。

日本においても、社会正義の概念は重要な役割を果たしています。法律の中では「弁護士は基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と規定されており、法曹界で広く受け入れられています。また、日本社会福祉士会は国際ソーシャルワーカー連盟に参加し、社会正義や人権を尊重する取り組みをしており、これがソーシャルワークの重要な基礎となっています。

インドネシアでは、国是であるパンチャシラの5原則に「社会正義」が含まれており、国の基本方針として重要視されています。国際連合も、毎年2月20日を「世界社会正義の日」と定め、貧困や男女平等、労働者の権利の向上を目指す活動を推進しています。このように社会正義は、国際的な視点からも重要視されており、持続可能で公正な未来を目指すための指針となっています。

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