ケアン

ケルン（英語: cairn）は、自然には存在しない、人が積み上げた石塚のことです。スコットランド・ゲール語の「càrn（カールン）」が語源で、英語の発音では「ケアン」に近いですが、日本では一般的に「ケルン」と呼ばれています。

ケルンの概要

ケルンは、主に高地や湿原、尾根、山頂付近など、見晴らしの良い場所に作られることが多いです。材料はその場にある石が使われ、様々な形状や大きさのものがあります。

ケルンの目的

ケルンは、様々な目的のために作られてきました。

埋葬場所の標示と慰霊: 古代から、埋葬地を示すためや、故人を偲ぶためにケルンが築かれてきました。ケルンは、死者を弔い、記憶するためのモニュメントとしての役割を果たしていたのです。
山頂の標示: 山頂にケルンを築くことで、そこが山頂であることを示し、登山者の達成感を高める役割があります。また、ケルンは、山頂からの眺望を妨げることなく、自然に溶け込むように存在しています。
道標: ケルンは、登山道やルートを示す道標として重要な役割を果たします。特に、視界の悪い場所や、道が不明瞭な場所では、ケルンが頼りになる目印となります。ケルンは、登山者を安全に導くための道しるべなのです。
趣味の石積み: 近年では、趣味として石を積み上げる人も増えています。バランスロックやスタッキングロックなどと呼ばれ、自然の中でアートを楽しむ行為として親しまれています。しかし、これらの石積みは、自然環境に影響を与える可能性も指摘されています。

ケルンの撤去

日本では、1960年代以降の登山ブームの中で、ケルンが乱立するようになりました。特に、単なる思い出作りのためのケルンや、遭難碑としてのケルンが増加し、景観を損ねるという問題が指摘されるようになりました。

高山蝶の研究家である田淵行男は、ケルンに対して「戸惑いと恐れを抱く」と随筆で述べ、ケルンのあり方について問題提起しました。これを受けて、環境省はケルンのあり方について検討を開始し、1974年10月には、全国の国立公園管理事務所に対し、必要最小限以外のケルンを撤去するように通知しました。これは、ケルンが突風で崩壊する恐れがあることや、自然景観を保護することが目的でした。

ケルンは、歴史的に重要な意味を持つものも存在しますが、近年では、環境への影響や景観の問題から、そのあり方が見直されています。自然と共存しながら、ケルンとどのように向き合っていくかが、今後の課題となっています。

関連項目

ケアンパップル・ヒル (Cairnpapple Hill) - スコットランドの丘
チェンバード・ケアン (Chambered cairn)
オボー
クルガン
仏塔
モニュメント
ケアン・テリア
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