ケナガネズミ

ケナガネズミについて

ケナガネズミ（毛長鼠、学名: Diplothrix legata）は、哺乳綱の齧歯目に属する特異な生物です。この種はケナガネズミ属の唯一のメンバーであり、主に日本の奄美大島、沖縄島北部および徳之島に分布しています。もともと沖縄島に生息していたことが確認されており、縄文時代にはその範囲が広がっていた可能性も指摘されています。

分布と生息地

ケナガネズミは固有種であり、特定の地域にのみ見られるため、保護が必要な動物です。現在は主に奄美大島や沖縄本島北部に分布し、特にアラカシやスダジイを生息場所とする常緑広葉樹林内で見ることができます。

形態と特徴

このネズミは体長22から33センチメートル、尾は24.6から33センチメートルにも達します。背面は主に黄褐色で、体毛は長さ2.9センチメートルですが、5から6センチメートルの剛毛も混じっています。腹面の色は暗褐色で、尾は黒褐色だがその先端は白いです。後足の長さは4.9から6センチメートルとされています。

生態

ケナガネズミは夜行性で、樹上での生活に適応しており、樹洞内に作る巣は30センチメートルの直径を持つ球状です。食性は雑食で、シイ類の果実、サツマイモ、昆虫、さらにはナメクジやミミズなどを食べます。繁殖は秋から初冬にかけて行われ、通常2から5頭の幼獣を出産します。

人間との関わり

この種は地域によって異なる方言名を持ち、奄美大島では「ドオジロ」、徳之島では「ジュジュロ」や「ヤマアラシ」、沖縄島では「ヤマアジ」や「ヤマアージ」と呼ばれています。しかし、環境変化や人間活動によってケナガネズミの生息地が失われているのが実情です。森林伐採や農地開発、道路建設といった要因により生息数は急激に減少しています。

特に、外来動物であるイヌやネコ、フイリマングースによる捕食も深刻な問題です。1980年代から分布が制限され、奄美大島の南西部や沖縄島の国頭村などにとどまってしまいました。ただし、フイリマングース防除策が進められており、奄美大島では分布が若干回復傾向にあるとの報告もあります。

保護状況

ケナガネズミは1972年に国の天然記念物に指定され、2016年からは種の保存法に基づき国内希少野生動植物種に登録されています。2017年の沖縄県レッドリストでは絶滅危惧IA類に分類され、また環境省のレッドリストでは絶滅危惧IB類（EN）に指定されています。これによって、この種に対する保護の必要性が改めて強調されています。

ケナガネズミの生態系における役割やその保護について、認識を深めていくことが求められています。

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