ケナン・エヴレン

ケナン・エヴレンについて

ケナン・エヴレン（Ahmet Kenan Evren）は、1917年7月17日にトルコのマニサ県アラシェヒルで生まれ、2015年5月9日に93歳で亡くなった政治家および軍人です。彼はトルコの政治的潮流に深い影響を与えた人物として知られ、特に1980年9月12日の軍事クーデターを指導したことで名を馳せました。

経歴

エヴレンの軍人としてのキャリアは、1936年にアンカラのマルテペ陸軍学校に入学したことに始まります。1939年には砲兵少尉として任官され、次第にキャリアを積み重ね、1946年には軍事大学校を卒業しました。その後、1958年には国連軍の将校として韓国に駐留し、1963年には准将、1974年に大将（オルゲネラル）に昇進しました。

1978年には第17代参謀総長に任命され、当時トルコは深刻な政治的混乱に直面していました。左右対立によって内戦寸前の状況にあった1980年、エヴレンは軍部を率いてクーデターを敢行し、民主的な政権でしたが機能不全に陥っていた公正党のデミレル内閣を打倒しました。その結果、議会の解散、政党活動の禁止、主要な政治家の逮捕、戒厳令の施行が行われ、エヴレンは軍政の最高権力者となります。

クーデターからおよそ2年後の1982年11月、エヴレンは国民投票を経て新憲法の制定に成功し、その規定に従い文民として第7代トルコ大統領に就任しました。新しい憲法は参謀総長の権限を強化し、軍の政治への介入を合法的に支持する内容であったため、軍部の権力は大いに強化されました。

軍事政権の実態

エヴレン政権下では、軍による残酷な弾圧が行われました。反政権派の数千人が逮捕され、拷問を受けた者や、実際に処刑された者もいました。1980年10月28日には、クーデター後に11500人を逮捕し、50人を処刑したと発表されています。これに対して、西側諸国からは厳しい批判が寄せられましたが、国内では治安回復の功績やケマリズムの理念への回帰を評価する声も存在しました。

大統領退任後の生活

1989年に大統領を退任した後、エヴレンはエーゲ海沿岸のマルマリスで静かな隠棲生活を送りました。この期間中、彼は絵を描くことを趣味とし、数回の暗殺企画に巻き込まれることもありました。2006年には、かつて彼が逮捕したビュレント・エジェヴィトの死去を受けて、政治家を逮捕したことを後悔する発言を行いました。

さらに、2007年にはクルド人に対する政策の誤りを認めたことから、検察による捜査が開始されましたが、その後に中止されました。2010年には憲法改正が行われ、エヴレンはクーデターに関する免責特権を失いました。これにより、市民や人権活動家から彼に対する告発が行われ、2014年には国家に対する犯罪で終身刑判決が下されましたが、健康状態が悪化していたため収監は行われませんでした。

2015年5月9日、エヴレンはアンカラのトルコ軍病院で97歳で亡くなりました。彼の政治的影響と軍事政権のもたらした出来事は、トルコの歴史に深く刻まれています。

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