ケネス・E・ボールディング

ケネス・エワート・ボールディング (Kenneth Ewart Boulding)

ケネス・エワート・ボールディングは、1910年1月18日にイギリス・リバプールで生まれ、1993年3月18日に亡くなった著名な経済学者です。彼は、伝統的な経済学にとどまらず、社会科学の枠を広げることに情熱を注ぎ、数多くの著作を通じてその思想を広めました。

経歴

ボールディングは1928年にオックスフォード大学に奨学金で入学し、1931年に卒業しました。彼の経済学者としてのキャリアは、22歳の時にケインズが編集した『エコノミック・ジャーナル』に論文を発表したことから始まります。その後、シカゴ大学とハーバード大学にて2年間の研究を行い、一時期はエジンバラ大学で在籍しました。

1937年から1941年にかけてはコルゲイト大学で教鞭をとり、1941年から1942年にはプリンストン大学にて戦時中の経済政策に関する研究を行いましたが、平和主義の立場から辞職しました。その後、フィスク大学、アイオワ州立大学、マックギル大学、そしてミシガン大学にて教え、1977年まで教育活動を続けました。特にミシガン大学では1949年から1977年まで教え、その間にアメリカ経済学会のジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞するなど、多くの業績を残しました。

1963年から1964年にかけては国際キリスト教大学に招聘教授として招かれ、経済学の通常の授業に加え、一般社会体系論に関する特別講義を行いました。この時の講義内容は著書『歴史はいかに書かれるべきか』にまとめられました。1968年にはアメリカ経済学会の会長としても活躍しました。

1980年には日本経済新聞社等の招きにより来日し、平和に関する講演を行っています。

主な業績

ボールディングはその業績において、生物学者ベルタランフィの一般システム理論を基にした贈与経済学や組織論、さらには紛争解決理論の発展に寄与しました。彼は経済学のみならず、教育、詩作、システム科学といった多岐にわたる分野で活躍する学際的な学者であり、特にダーウィンの進化論を経済分析に統合した進化経済学の創立者の一人として名を馳せています。

また、バックミンスター・フラーの「宇宙船地球号」という概念を経済学に取り入れ、現代の環境問題に対しても鋭い洞察を提供しました。彼はクエーカー教徒であり、平和学に対する深い関心を持ち、平和研究や平和運動に積極的に参加したことでも知られています。妻のエリース・ボールディングも平和研究者であり、二人は互いに影響を与え合いました。

主な著書

ボールディングは多くの著書を残し、その中で経済や社会の複雑な要素に対する分析を展開しています。著作には『平和の経済学』、他にも『経済政策の原理』や『紛争の一般理論』といった重要なタイトルが含まれます。彼の著作は、今も学界や実務の現場で引用され、後の研究者たちに影響を与え続けています。

ボールディングの研究や著作を通じて、経済学の概念はより幅広い社会科学との関連を持つものとして発展していきました。彼の思想は、今日の経済学と社会科学研究における重要な基盤を提供しています。

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