組織論

組織論とは

組織論は、社会科学の分野において、組織というものを研究対象とする学問です。組織科学とも呼ばれ、社会学、政治学、心理学、経営学といった様々な分野の知見を統合した学際的な研究が行われています。

組織運営に関する考察は、古代ギリシャの哲学者プラトンの著書『国家』にも見られるように、古くから存在していました。しかし、現代的な組織論が本格的に研究されるようになったのは、20世紀初頭のことです。この時期、軍隊や工場などの組織が大規模化するにつれて、組織の効率的な運営や管理に対する関心が高まりました。

古典的な組織論

社会学者マックス・ヴェーバーは、合理的な組織に見られる特徴を「官僚制」という概念で説明しました。彼は、近代官僚制を、権限範囲の明確化、組織の階層構造、専門分化、文書によるコミュニケーションなどを特徴とする組織形態であると定義し、技術的に優れた組織であると評価しました。

同時期に、フレデリック・テイラーは、工場労働者を機械の一部と捉え、管理する「科学的管理法」を提唱しました。この手法は、労働者の作業を細分化し、効率を追求することで、大量生産体制の確立と労働コストの削減に大きく貢献しました。

しかし、科学的管理法の下での単純作業は、労働者に大きな負担を強いるものでもありました。

人間関係論の登場

このような状況の中、エルトン・メイヨーは、1927年から5年間実施されたホーソン実験を通じて、労働者の意欲が組織活性化に不可欠であることを明らかにしました。この研究は、組織運営において、人間関係の重要性を示唆するものでした。

この流れを受け、チェスター・バーナードは、組織が成立するためには、個人の努力を組織目的に向けさせる「協働意志」、組織の存在意義となる「共通の目的」、そして組織内の要素を結合させる「コミュニケーション」の3つが不可欠であると論じました。

近年の組織論

近年の組織論では、組織は外部環境や内部要因による変化や緊張に常に直面しており、それらに対応するために新しい考え方や行動様式を取り入れ、創造的に進化していくものとして捉えられています。

例えば、日本企業に見られる「カイゼン」活動は、労働者を単なる機械の一部ではなく、問題解決者と位置づけ、現場でのボトムアップ型の活動を通じて、行動様式を継続的に革新し、生産性向上を達成しています。野中郁次郎は、このような組織のあり方を「ナレッジマネジメント」と名付け、知識創造の重要性を強調しました。

組織論は、組織の構造、機能、プロセス、そして組織を取り巻く環境など、多岐にわたる要素を研究対象としています。これらの研究を通じて、組織の効率性や有効性を高めるための理論や実践的な方法が模索されています。

組織論は、企業だけでなく、政府機関、NPO法人、学校など、あらゆる組織の運営に不可欠な視点を提供しています。

組織論に関わる人々

組織論の研究に貢献した主な人物として、以下が挙げられます。

マックス・ヴェーバー：官僚制の概念を提唱
フレデリック・テイラー：科学的管理法を提唱
エルトン・メイヨー：ホーソン実験を実施
チェスター・バーナード：協働意志、共通の目的、コミュニケーションの重要性を提唱
* 野中郁次郎：ナレッジマネジメントを提唱

組織論は、組織の発展と変革を理解し、より良い社会を築く上で、重要な役割を果たしています。

もう一度検索