システム科学

システム科学は、自然、生命、医療、社会科学といった広範な領域において、複雑な対象を「システム」として捉え、分析、設計、制御、マネジメントを行う学際的な学問体系です。対象固有の知識に留まらず、システムモデルやシステム的性質を用いて対象を把握し、多様な分野に応用可能な、学際的で異領域をつなぐ認識地図やモデルを構築することを目標としています。

システム科学の構成要素

システム科学は、形式科学と応用科学の領域を含みます。

形式科学

複雑系 (Complex Systems)
サイバネティックス (Cybernetics)
力学系理論 (Dynamical Systems Theory)
ソフトシステム方法論
エージェント・ベース・モデル

応用科学

制御理論 (Control Theory)
オペレーションズ・リサーチ (Operations Research)
社会システム理論 (Social Systems Theory)
システム生物学 (Systems Biology)
システムダイナミクス (Systems Dynamics)
システム生態学 (Systems Ecology)
システム工学 (Systems Engineering)
システム心理学 (Systems Psychology)

歴史

システム的な考え方の起源は、古代エジプトのピラミッド建設におけるプロジェクトマネジメントや工学にまで遡ることができます。ライプニッツの哲学や熱力学にもシステム的な考え方を見出すことができます。

ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィは、1945年に著書『一般システム理論』を発表し、一般システム理論の研究を深めました。1954年にはスタンフォード大学高等行動科学センターで着想を得て、1956年に一般システム協会が設立され、1988年にはInternational Society for the Systems Sciences (ISSS)と名称を変更しました。

理論

基礎理論

システム理論は、システムの考え方自体の包括的な理論研究です。システムの一般理論と一般システムの理論の二つの流れがあり、後者においては、システム特性を代数学や圏論における準同型を手がかりとして分類し、代表元を抽出して研究するリサーチプログラムが確立されました。

特定のシステム特性に注目した研究分野

システムダイナミクス: 複雑系の動的振舞いを分析し、時間遅延や内部フィードバック・ループを研究します。コンピュータシミュレーションを利用し、非線形な関係を扱います。
システム工学: 複雑な人工システムの組織化および開発をテーマとする工学の学際分野です。
生存可能システムアプローチ: 経営意思決定などの意思決定システムは、生物と同様の機能を有する必要があるとし、神経系のメタファーを用いて組織分析を行います。

主体と対象との関係性及び対象自体の特性の両方に複合的にシステム概念を適用する分野

システム解析: 経営フローなどをシステム的に表現・解析し、情報システムの実装による業務改善や自動化を目的とします。
システムデザイン: 要求仕様を満たすために、コンピュータシステムのハードウェア・ソフトウェアアーキテクチャ、コンポーネント、モジュール、インターフェースおよびデータを定義します。
ソフトシステム方法論: 組織プロセスをモデル化し、問題解決や変革のマネジメントに用いられます。
エージェントベース社会システム科学: エージェントベース・アプローチに基づく社会システム理論の再構築、シミュレーション言語とその技法の開発、実証分析を行い社会的提言を発信することを目的とします。
* サービス科学: 価値の協創の研究が個別分野に限定されないことから、システム科学はサービス科学の理論的核をなします。サービスシステム科学と呼ばれることもあります。

分野

システム科学は、学際的な特徴から、極めて多様な分野に応用されています。

組織

システム科学の研究を推進する主要な組織として、The International Society for the Systems Sciences（ISSS）があります。ISSSは学術、ビジネス、政府、非営利組織など広範囲なメンバーで構成され、複雑系の科学的研究からコミュニティー発展や経営への相互作用アプローチまで学際的に取り組んでいます。

International Federation for Systems Research（IFSR）は、国際・地域学会間の国際連合として設立された非営利の科学・教育機関です。学会間の関係強化と創発的意見交換を通じて、サイバネティックスやシステムズリサーチ、システムズアプリケーションを学会の枠を超えて推進することを目的としています。

サンタフェ研究所（SFI）は、複雑系の研究に注力している研究所です。複雑適応系の分野の考えを広めることを目的としています。

日本国内では、エージェントベース社会システム科学研究センター（CABSSS）がエージェントベース社会システム科学を拡める目的で設立されました。

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