ケプラー46

ケプラー46（別名：KOI-872）は、地球からおよそ2590光年の距離にあること座の恒星です。この星は、質量こそ私たちの太陽の約9割と近い値ですが、推定される年齢は約100億年と、太陽（約46億年）よりもずっと古くから存在していることが分かっています。

この恒星の周囲には、少なくとも3つの惑星が周回する系が存在します。これらの惑星の存在は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡が2009年以降に行った観測データに基づいています。

ケプラー46系で初めて確認された惑星は、ケプラー46bと名付けられました。この惑星は、ケプラー探査機が捉えた恒星の明るさの変化（トランジット）の詳細な分析から発見されました。ケプラー46bは、その質量が木星にわずかに満たないガス惑星であると考えられており、主星であるケプラー46の非常に近くを、約34日という短い周期で公転しています。

ケプラー46bの発見に続いて、この系における2番目の惑星、ケプラー46cの存在が明らかになりました。この惑星の発見は、ケプラー46bが主星の手前を通過する際の時刻（トランジット時刻）が、予測される時刻からわずかにずれる現象を解析することによって行われました。この「トランジット時刻変動（TTV）」と呼ばれる手法は、トランジットを起こす惑星の軌道が、別の天体（この場合はケプラー46c）からの重力的な影響を受けて変化することで生じるものです。

ケプラーによって公開された観測データを利用した外部の研究グループが、このTTV手法を用いてケプラー46c（当時は惑星候補KOI-872c）を見出しました。彼らの解析により、この候補天体が99%の信頼度で惑星であることが確認されました。ケプラー46cの検出は、TTV手法が太陽系外惑星、さらには惑星を周回する衛星（太陽系外衛星）を探し出す上で非常に有効な手段となりうることを示す、初期の成功例の一つとして高く評価されています。

ケプラー46c自身は、およそ57日という周期で主星を公転しており、その質量はほぼ土星に匹敵すると推定されています。この惑星が、内側のケプラー46bの軌道に観測可能な重力的な影響を与えていることが、TTVとして検出されました。

また、ケプラー46cの発見を報告した論文では、さらなる惑星候補であるKOI-872.03の存在も示唆されました。その後の詳細な観測データや複数の解析手法による検証を経て、この候補天体の存在が確認され、ケプラー46dとして正式に命名されました。ケプラー46dは、この系の中で最も主星に近い、約6.8日の周期で周回している惑星であると考えられています。

ケプラー46cやケプラー46dのように、既に発見されている惑星の軌道運動の変化（特にトランジット時刻）を解析することで、他の惑星の存在を間接的に推測し確認するという方法は、天文学的に重要な意味を持っています。これは、19世紀に天王星の奇妙な軌道から未知の惑星の存在が予測され、その後に海王星が発見された経緯と類似しています。このような間接的な検出手法は、主星の手前を通過しないなど、従来のトランジット法だけでは見つけにくい様々な種類の天体を発見するための強力なツールとなります。ケプラー46系は、このような先進的な検出手法の有効性を示す興味深い事例として、太陽系外惑星研究において重要な位置を占めています。

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