太陽系外衛星

太陽系外衛星（Exomoon）とは

太陽系外衛星とは、太陽系外惑星やその他の恒星ではない天体の周囲を公転する衛星のことです。単に系外衛星とも呼ばれます。太陽系内の衛星の研究から、惑星系における衛星の存在は一般的であると考えられています。特に、ガス惑星は多くの衛星を持つ傾向があり、系外惑星でも同様の普遍性を持つと予想されています。

褐色矮星を公転する衛星の定義

従来の定義では、衛星は惑星の周囲を公転する天体とされていました。しかし、褐色矮星の周囲に惑星サイズの衛星が発見されると、惑星と衛星の区別が曖昧になりました。国際天文学連合は、「恒星や恒星残骸の周囲を公転し、重水素の熱核融合を起こさない天体を惑星とする」と定義しました。この定義により、形成過程に関わらず、質量が13木星質量以下の天体は惑星と呼ばれることになりました。

太陽系外衛星の特徴

太陽系外衛星は、まだ直接的な観測例がなく、その性質はほとんど解明されていません。しかし、太陽系の衛星と同様に、多様性に富んでいると考えられています。特に、ハビタブルゾーンにある巨大ガス惑星の周りを公転する地球サイズの衛星には、生命が存在する可能性も指摘されています。

軌道傾斜角

惑星の形成過程によって、衛星の軌道平面は異なります。衝突によって形成された地球型[[惑星]]の衛星では、恒星に近い場合、潮汐力の影響で軌道平面が惑星の軌道平面と一致すると考えられます。しかし、惑星と衛星の距離が近い場合は、傾いた軌道平面を持つ可能性もあります。巨大ガス惑星の場合、木星のガリレオ衛星のように、周[[惑星円盤]]内で形成された衛星は惑星の赤道面に沿った軌道を持つと考えられています。

短周期惑星における衛星の欠如

ホットジュピターのような恒星に近い惑星では、潮汐力によって惑星の自転が減速し、潮汐固定されることがあります。潮汐固定された惑星では、衛星が安定して存在できる領域（ヒル球）の外側に同期軌道が位置するため、衛星は惑星に落下してしまいます。この現象が、短周期惑星で系外衛星が発見されない理由の一つであると考えられています。

太陽系外衛星の検出方法

現在までに、直接・間接的に検出された系外衛星は存在しませんが、理論的には多くの系外惑星の周りに存在すると考えられています。

検出方法の提案

ドップラー分光法では、惑星と衛星の運動による恒星のスペクトル変化を区別できないため、別の検出方法が提案されています。

直接撮像法: 衛星からの光を直接捉える方法ですが、恒星との明るさの差やサイズの小ささから非常に困難です。ただし、潮汐力で加熱された衛星は、惑星と同程度の放射を持つ場合があり、将来的な観測装置での検出が期待されています。
惑星のドップラー分光法: 惑星自身のスペクトルの変化から衛星を検出する方法ですが、現在の観測精度では困難です。
惑星磁気圏からの電波放射: 惑星の磁気圏と衛星の相互作用による電波放射を捉える方法です。木星の衛星イオのように、電波を放射する衛星が存在する可能性を示唆しています。
マイクロレンズ効果: 重力マイクロレンズ法を利用して衛星を検出する方法です。自由浮遊惑星を公転する衛星候補天体で利用されていますが、一般的な衛星の検出は困難です。
パルサータイミング法: パルサー惑星の周りを公転する衛星を、パルサーのパルス周期の変動から検出する方法です。
トランジットタイミング効果（TTV）: 惑星のトランジット時刻の変動から衛星を検出する方法です。TTVは、惑星と衛星の共通重心の周回運動によって発生します。
トランジット法: 衛星が恒星の前を通過する際に発生する減光を検出する方法です。巨大ガス惑星の周りを公転する大きな衛星は、原理的には検出可能です。

候補天体の検出

観測例

MOA-2011-BLG-262L: 重力マイクロレンズ法で発見された天体で、自由浮遊惑星を公転する衛星候補の可能性があります。ただし、惑星である可能性も残されています。
ケプラー1625b I: ケプラー1625bの周りを公転する海王星サイズの衛星候補です。ケプラーの光度曲線の分析やハッブル宇宙望遠鏡の追加観測によって、その存在が示唆されています。
1SWASP J140747.93-394542.6: 環を持つ天体の周りに、環の構造から衛星の存在が示唆されています。

その他の候補天体

複数の候補天体が検出されていますが、確証を得るにはさらなる観測が必要です。

探索プロジェクト

* Hunt for Exomoons with Kepler (HEK): ケプラーミッションの一環として、太陽系外衛星の発見を目的としたプロジェクトです。ケプラー1625b Iを発見しました。

まとめ

太陽系外衛星は、まだ謎が多い天体です。しかし、その存在は理論的に強く支持されており、今後の観測技術の進歩によって、多くの系外衛星が発見されることが期待されます。系外衛星の発見は、太陽系外の生命の可能性を追求する上で重要な意味を持つでしょう。

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