ケプラー78

ケプラー78星系

ケプラー78は、地球からおよそ407光年の彼方、夜空ではくちょう座の領域に位置する恒星です。視等級は約12等と、肉眼で捉えることはできません。この星は太陽に比べてやや小ぶりで、その半径は太陽の約74%にあたります。表面温度は推定で約5058ケルビンであり、太陽（約5778ケルビン）よりもわずかに低い温度です。

発見までの経緯

この恒星が科学者の注目を集めたのは、NASAが運用するケプラー宇宙望遠鏡の観測対象となったことがきっかけです。ケプラー計画は、恒星の手前を惑星が通過（トランジット）する際のわずかな明るさの変化を捉えることで、太陽系外惑星を探すことを目的としていました。ケプラー78もその候補の一つとしてリストアップされ、当初はケプラー入力カタログ（KIC）の番号であるKIC 8435766として識別されていました。

2011年に発表されたケプラーの初期の観測データに基づく分析では、KIC 8435766の周期的な明るさの変化パターンは、互いの前を通過し合う二つの恒星、すなわち食連星である可能性が指摘されました。しかし、その後の詳細な光度曲線の解析が進められるとともに、地上からの高精度な分光観測や、他の望遠鏡による高解像度の撮像観測といった多角的な観測が組み合わされて研究が進められました。

これらの精密な調査の結果、この星の周りで観測されていた周期的な変光は、恒星同士の食によるものではなく、地球と同程度の大きさを持つ天体がその母星である恒星の手前を通過することによって引き起こされていることが明確になりました。つまり、それは食連星ではなく、恒星の周りを公転する惑星の存在を示す証拠だったのです。

この重要な発見が確定したことを受けて、国際的な慣例に従い、この恒星は正式に「ケプラー78」という名称が付与されました。そして、その軌道上で見つかった惑星は、「ケプラー78b」と名付けられ、ケプラー宇宙望遠鏡によって発見された惑星のカタログに登録されました。

惑星ケプラー78bの特徴

発見された惑星ケプラー78bは、そのサイズが地球と非常に近いことが判明しました。惑星のサイズはトランジットの際の恒星の減光率から比較的正確に求められますが、惑星の質量を推定するには別の方法が必要です。ケプラー78bの質量は、母星であるケプラー78が惑星の重力によってわずかに揺さぶられる様子を、視線速度法という手法を用いて精密に測定することで算出されました。

視線速度法による質量推定の結果、ケプラー78bの質量は地球の質量とほぼ同等であることが示されました。惑星のサイズと質量がわかれば、そこから惑星の平均密度を計算することができます。計算されたケプラー78bの平均密度は、地球の平均密度と驚くほど近い値でした。地球が高い密度を持つのは、主に岩石や金属で構成されているためです。したがって、ケプラー78bもまた、地球のように岩石や金属を主成分とする、硬い表面を持った岩石惑星であると結論付けられました。

ケプラー78bの発見は、太陽系外惑星探査の歴史において極めて重要な出来事となりました。なぜなら、これは太陽系外において、私たちの地球とほぼ同じサイズを持ち、かつ岩石で構成されていることが確認された最初の惑星例となったからです。それまでにも多くの太陽系外惑星が発見されていましたが、地球と同じような岩石惑星、特に地球サイズに近いものは非常に稀でした。ケプラー78bの発見は、「第二の地球」探しという目標に向け、地球型惑星が宇宙に広く存在する可能性を示唆するものであり、今後の太陽系外惑星探査、特に生命存在可能な惑星の探査に向けた期待を大きく高めました。

ただし、ケプラー78bはその母星であるケプラー78に非常に近い軌道を公転しており、計算される表面温度は非常に高温となるため、生命が存在する可能性は極めて低いと考えられています。しかし、そのサイズと組成が地球に酷似しているという点において、この惑星の科学的な意義は非常に大きいと言えます。

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