視線速度

視線速度とは

視線速度（しせんそくど、radial velocity）とは、天体の動きを観測者の視線方向、つまり奥行きに沿った速度成分で表したものを指します。この概念は、天体の運動やその性質を理解する上で基本的な要素となっています。

視線速度に対して、視線に垂直な方向の速度成分を「接線速度」（transverse velocity または tangential velocity）と言います。これら二つの速度成分を組み合わせることで、その天体の全体的な空間速度（space velocity）を得ることができます。また、接線速度は「固有運動」（proper motion）として表現され、これは天球上での天体の見かけの運動を示します。

ドップラー効果と視線速度

天体から発せられる光は、視線速度に影響を受け、ドップラー効果を体験します。たとえば、天体が観測者から遠ざかっている場合、その光の波長は伸びて赤方偏移が生じます。一方、近づいている場合は波長が縮んで青方偏移が見られます。この現象は、天体の運動を理解するための重要な手掛かりとなります。

視線速度の測定

恒星や銀河といった遠距離の天体では、視線速度を高精度な分光観測によって測定することが可能です。具体的には、既知のスペクトル線の波長を実験室で測定した値と比較することで、対象となる天体の視線速度が正確にわかります。

分光連星とその動き

多くの連星系では、我々が観測する際、軌道面が視線に対して傾いているため、軌道運動により両方の星の視線速度は数km/sの範囲で変動します。このため、スペクトルがドップラー効果によって周期的に変化します。光学機器を用いた直接観測で二つの星を解明できない場合でも、それらが連星であることを知る手がかりとなります。このような星は「分光連星」と呼ばれています。分光連星の視線速度を詳細に調査することで、各星の質量や離心率、軌道長半径等の軌道要素を推定することが可能になります。

太陽系外惑星の検出

視線速度の概念は、太陽系外惑星の検出にも応用されています。特に、「ドップラー分光法」という手法が用いられ、惑星の存在や特性を明らかにするために視線速度の変化を分析しています。このように、視線速度は天文学において非常に重要な役割を果たすパラメータの一つです。

まとめ

視線速度は、天体の移動や性質を理解するための重要なデータを提供するものであり、ドップラー効果を通じてその運動を観測可能にします。分光連星の研究や太陽系外惑星の探査においても、その応用は多岐にわたり、天文学の発展に寄与しています。

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