ケリー・アン・ウェルズ

オーストラリアを代表する多才な人物、ケリー・アン・ウェルズは、1972年のミス・ユニバース世界大会で栄光を掴み、オセアニア地域で初めてこの称号を手にしたことで知られています。

1951年9月25日、西オーストラリア州に生を受けた彼女は、パースの街で成長しました。若くしてモデルの世界に足を踏み入れ、その魅力と才能は地元パースで評判を呼び、モデルとしてだけでなく、「お天気お姉さん」としても親しまれる存在となりました。さらなる飛躍を目指し、1971年には世界のファッションの中心地であるニューヨークへと活動拠点を移します。約6年間にわたり、国際的な舞台でモデルとしてのキャリアを積み重ねました。

彼女の人生における大きな転機は、1972年にプエルトリコで開催された第21回ミス・ユニバース世界大会でした。この大会で並み居る世界の代表を抑え、見事優勝を果たし、弱冠20歳で世界一の美女の栄誉に輝きました。しかし、この栄光の戴冠式には、悲しい出来事が影を落としていました。通常、ミス・ユニバースの戴冠は前年度の優勝者によって行われますが、この年、1971年の優勝者であるレバノンのジョルジーナ・リザークは会場に姿を見せませんでした。その背景には、大会のわずか約2ヶ月前にイスラエルで発生したテルアビブ空港乱射事件がありました。この事件で多くのプエルトリコ人が犠牲となったことから、レバノン政府は国民であるジョルジーナの安全を考慮し、プエルトリコへの渡航を認めなかったのです。そのため、ケリー・アンにティアラを授けたのは、1970年のミス・ユニバースであるプエルトリコのマリソル・マラレでした。

ミス・ユニバースとしての華やかな任期を終えた後も、ケリー・アンの挑戦は続きました。一時期はテレビの世界に進出し、ニュースキャスターとしてのキャリアも模索しましたが、モデルとしての活動も精力的に続け、1983年までトップモデルの一人として活躍しました。その後、彼女の関心はファッションデザインやスタイリングへと広がり、これらの分野で自身の感性を表現する傍ら、新たにインテリアデザインを学び始めます。そして近年、故郷であるパースに戻り、2022年2月時点の情報によれば、リフォーム業を経営するなど、実業家としても手腕を発揮しています。

また、彼女の人生には病との闘い、そしてそれを乗り越えたエピソードもあります。2000年代半ば、彼女は慢性疲労症候群を患い、歩行も困難になるほど体力的に厳しい状況にありました。しかし、2005年に夫の勧めを受けてスキーを始めたことが、心身の回復に大きな助けとなったといいます。本人の言葉によれば、「スキーをしたことで再び気分が良くなり、特に寒さが疲労を和らげてくれた」とのこと。このエピソードは、困難な状況にあっても新たな挑戦が活路を開く可能性を示唆しています。

モデルとしての輝かしい成功から始まり、メディア、ファッション、インテリア、そしてビジネスの世界へと、常に変化を恐れず多様な才能を開花させ続けたケリー・アン・ウェルズの歩みは、多くの人々にインスピレーションを与えています。

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