ケルナー式接眼鏡

ケルナー式接眼鏡は、1849年にカール・ケルナーが顕微鏡用に発表した接眼レンズの一形式です。

構造

ケルナー式接眼鏡は、ラムスデン式接眼鏡を改良したもので、2群3枚のレンズで構成されています。ラムスデン式接眼鏡の後ろ側のレンズを、色消し2枚構成にしたものがケルナー式接眼鏡です。レンズの硝材の一例としては、前からBK7、SK5、SF2が用いられ、見かけ視界は約50度、瞳距離は0.486fとなります。

特徴

ケルナー式接眼鏡は、色収差が比較的少なく、視野も比較的広いという特徴があります。そのため、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡など、様々な光学機器で中倍率から低倍率の観察に使用されてきました。また、像面に糸を入れられる構造のため、十字線接眼鏡にも多用されています。

一方で、像面湾曲、非点収差、歪曲収差は比較的強く残るという欠点もあります。しかし、見かけ視界が40度から50度程度であれば、十分に実用的な性能を発揮します。

望遠鏡用製品

かつてペンタックスは、K40mmというケルナー式接眼鏡を販売していました。マルチコートが施されており、非常に明るくコントラストの高い像が得られるのが特徴でした。アッベ式接眼鏡やプレスル式接眼鏡に匹敵する性能を持ちながら、見かけ視界が40度を超えると色収差らしきものが見られるものの、無着色でクリアな像質のため、実用上の問題はありませんでした。スリーブ径が38mmであるため、脱着交換が容易であり、リングを外すと一般的な低倍率接眼鏡規格である36.5mmねじ込みになるため、他社の望遠鏡にも使用可能でした。

ニコンもK-40mmというケルナー式接眼鏡を製造していました。特に歪曲収差が少ない設計でしたが、特殊な44mm P=0.75mmねじ込み規格であり、アダプターも存在しませんでした。

ケルナー式接眼鏡は、その構造のシンプルさ、比較的良好な光学性能、そして汎用性の高さから、長年にわたり多くの光学機器に採用されてきた実績のある接眼レンズです。

参考文献

天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'83年版』地人書館
月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'87年版』地人書館
* 吉田正太郎『天文アマチュアのための望遠鏡光学・屈折編』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28908-1

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