ケルベロス-地獄の番犬

ケルベロス-地獄の番犬

『ケルベロス-地獄の番犬』は、1991年に公開された押井守監督による実写映画であり、後に「ケルベロス・サーガ」と呼ばれるシリーズの一作です。前作『紅い眼鏡/The Red Spectacles|紅い眼鏡_The Red Spectacles』の世界観を引き継ぎつつ、物語は新たな展開を見せます。

概要

前作からスケールアップし、プロテクトギアの製作数も大幅に増加。しかし、本格的な造型が施されたのは主要人物用のみで、大半は簡易なものでした。香港や台湾でのロケを敢行し、実銃を使用した迫力あるアクションシーンが実現しました。当初はアクション映画として企画されましたが、撮影監督の助言を受け、押井監督が自由に演出することで、独自の作品世界が構築されました。

ストーリー

首都警特機隊、通称「ケルベロス隊」の反乱事件から3年後。仮出所した元隊員の乾は、事件後国外へ逃亡した上官・都々目紅一を追って台湾へ向かいます。逃亡者支援組織の男「林」の案内で紅一の住居に辿り着きますが、紅一は同居する少女「唐密」を残して姿を消していました。乾は唐密と共に、紅一の足跡を追って台湾各地を巡る旅に出ます。

キャスト

乾（いぬい）：藤木義勝
都々目紅一（とどめこういち）：千葉繁
唐密（タンミー）： 蘇意菁（スー・イーチン）
林（はやし、白服の男）：松山鷹志

スタッフ

原作・監督・脚本：押井守
音楽：川井憲次
* メカデザイン：出渕裕

制作の裏側

本作は、当初「強化装甲服『プロテクトギア』が大量に登場するアクション映画」として企画されました。しかし、様々なアクシデントが重なり、押井監督が思うように演出できない状況が続きました。そんな中、撮影監督の間宮庸介が「やりたいようにやればいいんじゃないか」と声をかけたことで、押井監督は吹っ切れたといいます。それからは、あらかじめ用意されたシナリオよりも、その時に監督自身が撮影したい風景や道具を中心に撮影していきました。

編集作業では、「俳優の芝居を片っ端から没にする」という方針で作品の全体像が構築されました。その結果、「台湾の路地裏を長身の男性と、少年の様な少女が徘徊する」という内容の映画になったのです。

押井監督は、「コンセプトが明快な映画になったので嬉しかった。同時に『実写作品のスタッフとしてのキャリアもこれで終わりかな』とも思ったが、これだけ好き放題に作れたので後悔はなかった」と振り返っています。

タイトルについて

当初のタイトルは『ケルベロスの島』でしたが、後に『His Master's Voice』に変更されました。しかし、日本ビクターの商標登録の関係で許可が下りず、苦肉の策として現在の『ケルベロス-地獄の番犬』というタイトルになった経緯があります。LD化の際には、『Stray Dog - KERBEROS PANZER COPS』とタイトルが変更されました。

プロテクトギアと銃器

ケルベロス・サーガに登場するプロテクトギアは、重厚な外観が特徴的です。本作では、前作を上回る数のプロテクトギアが登場しますが、本格的な造型が施されたものは一部に限られています。また、ケルベロス・サーガではMG34が主要な銃器として使用されますが、本作では香港での撮影の都合上、MG42が使用されました。MG42は連射速度が速いため、劇中では発砲音を別の銃器のものに差し替えるなどの工夫が凝らされています。

DVD

2003年に発売されたDVD-BOX「押井守シネマ・トリロジー 初期実写作品集」に収録されています。2010年4月23日には単体版も発売されました。

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