ケルート山

ケルート山：インドネシアを脅かす活火山

ケルート山は、インドネシアのジャワ島東部に位置する活火山です。環太平洋火山帯に属し、その歴史において度々大規模な噴火を起こしており、周辺地域に甚大な被害をもたらしてきました。インドネシア語ではGunung Kelud、Klut、Cloot、Kloet、Kloete、Keloed、Kelutなど複数の呼び名があります。

繰り返される噴火と甚大な被害

西暦1000年以降、ケルート山は30回以上の噴火を記録しています。特に過去600年間で発生した噴火による死者数は15,000人を超え、その脅威の大きさを物語っています。

過去の主な噴火と犠牲者数は以下の通りです。

1586年：約10,000人
1872年：約200人
1919年：約5,000人
1990年：約30人

これらの噴火では、溶岩流や火砕流に加え、ラハール（火山泥流）による被害が甚大でした。特に1919年の噴火では、ラハールが多くの犠牲者を生み出しました。「ラハール」という言葉の語源にもなったとされる、この災害はケルート山の噴火における大きなリスクとして認識されています。1951年、1966年、1990年の噴火でも合わせて250人以上の犠牲者が出ています。

1966年噴火後の防災対策

1966年の噴火後、ラハールの危険性を軽減するために、火口湖の水位を調整するアンペラトンネルが建設されました。このトンネルは火口の南西側に建設され、火口湖の水位を完全に空にすることなく、ある程度の量を減らすことでラハール発生のリスクを抑制することを目的としています。

近年の噴火と防災への取り組み

1990年の噴火では、7kmもの高さに達する噴煙柱が観測され、火砕流により30人以上の犠牲者が出ました。高温の火砕流はアンペラトンネルの入口を埋めるほどでした。

2007年の噴火では、噴火予知に基づき30,000人以上の住民が避難命令を受けました。噴火は数日に渡り断続的に発生し、火山灰の放出や溶岩ドームの出現などが確認されました。この時の噴火は、大規模なものではありませんでしたが、住民にパニックを引き起こし、避難指示に従わなかった住民も多数いたことが報告されています。

2014年の噴火では、7年ぶりに大規模な噴火が発生し、約20万人が避難を余儀なくされました。火山灰の堆積により民家の屋根が崩落し、死者も出ました。この噴火で火口を埋めていた溶岩ドームは消滅し、雨水によって再び火口湖が形成されました。

今後の課題

ケルート山は今後も噴火の可能性があり、周辺住民の生命と安全を守るための防災対策は極めて重要です。噴火予知技術の向上、避難計画の整備、住民への啓発活動などが継続的に行われる必要があります。 ケルート山は、自然の脅威と共存していくことの難しさと重要性を私たちに教えてくれる存在です。

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