ラハール

ラハールとは

ラハール（ジャワ語: Wlahar、インドネシア語: lahar、ヒンディー語: लहर）とは、火山活動によって生成された火山砕屑物が水分を含むことで流動性を帯び、重力に引かれて山の斜面を流れ下る現象を指します。この現象は、一般に火山泥流（かざんでいりゅう）と称され、火山の噴火や豪雨などがきっかけとなりますが、その定義は年代や研究領域により異なるため、一概には言えません。

ラハールの発生様式

ラハールは主に二つの発生様式があります。ひとつは火山の噴火によって直接引き起こされる場合です。この場合、例えば火山の山頂が雪や氷で覆われていて、その高熱によりこれらが急速に融解することによって生じます。また、火口湖が水で満たされている時に噴火が起こり、その水が泥流となって流れ下ることもあります。こうした状況では、流下速度が非常に速く、時速100 kmを超えることも珍しくありません。

もうひとつの発生様式は、雨などの影響による二次的なものです。この場合、火山灰が積もった地域に豪雨が降ることで、膨大な量の火山灰や土砂が一気に流れ下る現象が起こります。日本でよく知られているのはこのタイプで、通常は土石流として認識されています。

歴史的事例

ラハールによる被害は世界中で多数の記録があります。インドネシアのケルート山では、1586年に1万人が命を失い、1919年には火口湖からの泥流が麓の村を襲い、5,100人の死者を出しました。また、ニュージーランドのルアペフ山では1953年、ラハールにより鉄道橋が損傷し、151人が死亡しました。コロンビアのネバドデルルイス火山では、1985年に火砕流による泥流で21,500人が亡くなるなど、ラハールは計り知れない被害をもたらす可能性があります。

他にも、1991年のフィリピン・ピナトゥボ山の爆発では、大量の火山灰が降り積もり、毎年の雨季に泥流となって流れ出しました。2010年にはインドネシアのムラピ山が噴火し、その後も度々ラハールの危険性が指摘されています。

文学におけるラハール

ラハールは自然災害としてだけでなく、文学作品でも取り上げられています。三浦綾子の『泥流地帯』は、1977年に発表された小説で、十勝岳の噴火を背景にしています。また、石黒耀の『死都日本』も、架空の噴火を題材にした作品です。これらの作品を通じて、ラハールの恐ろしさとその影響を深く感じ取ることができます。

まとめ

ラハールは火山活動に伴う危険な現象であり、その影響は地域社会や環境に深刻な結果をもたらすことがあります。過去の事例を学ぶことで、リスクを理解し、災害に対する備えを強化することが重要です。火山に近い地域では、常に最新の情報を取得し、適切な準備を整えることが、命を守るためには必要不可欠です。

もう一度検索