ケン・マイルズ

ケン・マイルズ：伝説のレーシングドライバー

ケン・マイルズ(1918年11月1日-1966年8月17日)は、20世紀中盤を代表する凄腕レーシングドライバーの一人です。イギリス生まれのマイルズは、10代から整備工として腕を磨き、第二次世界大戦では英陸軍戦車部隊としてノルマンディー上陸作戦にも参加しました。戦後も整備工として働きながら草レースに参戦。その類まれな才能を開花させます。

1952年、マイルズはアメリカに移住。カリフォルニア州ロサンゼルスに拠点を移し、MG関連の整備工場を経営しながら、自作のスペシャルカーで[スポーツカークラブ・オブ・アメリカ]のレースに参戦。なんと14連勝という驚異的な記録を打ち立て、1960年代初頭まで活躍しました。ル・マン24時間レースには1955年に初参戦を果たしていますが、結果は12位でした。

転機は1963年に訪れます。マイルズは、サンビーム・タイガーにフォードV8を搭載するプロジェクトを通じて、伝説的なレーサー、キャロル・シェルビーと出会いました。シェルビーはマイルズの卓越した技術とドライビングスキルを見抜き、シェルビー・アメリカンに迎え入れます。マイルズは同社のテストドライバー兼テクニカルアドバイザーとして、チームの中核を担う存在となりました。

1960年代初頭、フォード・モーターは本格的なモータースポーツへの参戦を表明。1964年のル・マン24時間レースにフォードGT40を投入しましたが、全車がリタイアするという不名誉な結果に終わります。この失敗を踏まえ、フォードはシェルビー・アメリカンに協力を要請。マイルズもGT40のドライバーとして参戦することになります。

1965年のル・マンでは、ブルース・マクラーレンとペアを組みGT40で挑みますが、ギアボックスのトラブルでリタイア。しかし、翌1966年、改良型のGT40 Mk IIでデイトナ24時間レースとセブリング12時間レースを制覇するという快挙を達成します。そして、ル・マン24時間レースでも優勝候補として注目を集めました。

迎えた1966年のル・マン。マイルズとデニス・ハルムのペアはレース終盤、トップに躍り出ます。デイトナ、セブリングに続くル・マン制覇、トリプルクラウン達成目前という状況でした。しかし、ここでフォード幹部の思惑が介入します。宣伝効果を最大化するため、2位を走行するマクラーレン/エイモン組、そして3位のホールマン・ムーディ組と同時にフィニッシュラインを通過させる指示が出されたのです。マイルズは指示に従い減速。3台がほぼ同時にゴールインという演出は成功しましたが、レース主催者はマクラーレン/エイモン組のスタート位置が後方であったことを考慮し、彼らを優勝、マイルズ/ハルム組を2位に格下げ。マイルズは悲願のトリプルクラウンを逃すことになりました。

この悔しさも胸に秘め、マイルズはGT40の改良型プロトタイプであるJカーのテスト走行に臨みます。しかし、1966年8月、カリフォルニア州リバーサイドサーキットで高速走行中にコントロールを失いコースアウト。車両は横転し大破、マイルズは47歳という若さでこの世を去りました。

その輝かしい功績は、後世に語り継がれ、2001年にはアメリカモータースポーツ殿堂入りを果たしています。2019年には、彼とキャロル・シェルビーの活躍を描いた映画『フォードvsフェラーリ』が公開され、クリスチャン・ベールがマイルズを熱演。彼の伝説は、今もなお多くの人の心を掴んでいます。

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