ケースワーク

ケースワークの概要

ケースワークとは、特定の課題を抱える個人や家族に対して、社会福祉の観点から自立を支援するための専門的なソーシャルワークの技術です。日本語では「個別援助技術」としても知られていますが、日常的には「ケースワーク」という名称が一般的に使用され、主に福祉の現場で親しまれています。

歴史的背景

ケースワークの起源は、19世紀後半のイギリスまで遡ることができます。当時、慈善団体が設立され、貧困層に対して友愛訪問員が派遣されて支援活動が行われました。この訪問員に対する訓練が進む中で、徐々に専門的な技法が確立されていきました。その後、1920年代からはアメリカにおいてケースワークが発展し、特にメアリー・リッチモンドがその理論化に貢献しました。

ケースワークの実践

ケースワーカー（またはワーカー）は、クライエント（対象者）の生活における様々な問題を解決するために、多角的なアプローチを用いて援助を行います。具体的には、生活の困難や社会生活に関するニーズを満たすための指導やサポートを提供します。

バイステックの7原則

ケースワークでは、「バイステックの7原則」が特に重要視されています。これは、フェリックス・バイステックによって確立された原則で、現代のケースワークの基盤を形成しています。以下に、その7つの原則を解説します。

1. 個別化 (individualization): 各クライエントが抱える問題は独自のものであり、同じ問題は存在しないと考えます。したがって、クライエントを一括りにしてはならず、ラベリングやカテゴライズは禁じられています。
2. 受容 (acceptance): クライエントの意見や感情を否定せず、その背景を理解しようとする姿勢が求められます。ここでの受容は、犯罪や道徳に反する行為まで受け入れることではなく、クライエントの現実を無条件に受け入れることに焦点を当てています。
3. 意図的な感情表出 (purposeful expression of feeling): クライエントが感情を抑圧せず、自由に表現できる環境を整えることが重要です。これにより、自己理解を進め、心の枷を取り払うことが期待されます。
4. 統制された情緒的関与 (controlled emotional involvement): ケースワーカーは、クライエントの感情に影響されないようにし、自分の感情をコントロールしながら関わります。
5. 非審判的態度 (nonjudgmental attitude): ワーカーはクライエントの考えや行動に対して善悪を判断せず、主にサポート的な役割を果たすことが求められます。
6. 利用者の自己決定 (client self-determination): クライエント自身が自分の行動を決定することが基本的な考え方です。解決策はクライエント自身が見出すものでなければなりません。
7. 秘密保持 (confidentiality): クライエントのプライバシーを守ることは絶対条件です。この原則に違反することは、クライエントにとって深刻なリスクをもたらす可能性があります。

これらの原則は、クライエントと援助者との信頼関係を築くための重要な倫理的・行動的な基盤を提供します。また、バイステックはこの関係を「水路」に例え、援助関係を専門的なものであると位置づけました。

ケースワークにおける4つまたは6つのP

ケースワークのアプローチには、アメリカのヘレン・ハリス・パールマンが提唱した「4つのP」（その後、1986年に2項目が追加されて6つのPとなりました）という要素が含まれています。

• - 人 (person): 援助を必要とする個人。
• - 専門職 (professional person): 知識を持つ援助者。
• - 問題 (problem): 解決すべき課題。
• - 制度 (provisions): 援助に必要な制度。
• - 場所 (place): 援助を行う環境。
• - 過程 (process): 問題解決への道筋。

これら6つの要素は、ケースワーカーが効果的に支援を行うために必要不可欠と言えるでしょう。ケースワークは、クライエントの自立を目指し、信頼関係を基盤にした個別援助の技術といえます。

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