ケール包囲戦 (1703年)

ケール包囲戦：スペイン継承戦争における戦略的要衝の攻防

ケール包囲戦は、1703年2月20日から3月10日にかけて、スペイン継承戦争中に現在のドイツ・バーデン＝ヴュルテンベルク州の都市ケールで行われた戦闘です。フランス軍と神聖ローマ帝国軍が激突し、戦略的な要衝であるケールを巡る攻防が繰り広げられました。

戦争勃発とライン川での対峙

戦争が勃発すると、フランス軍と神聖ローマ帝国軍はドイツのライン川両岸で対峙しました。フランス軍はライン川左岸のストラスブールに拠点を置き、ドイツへの進出を狙っていました。一方、神聖ローマ帝国軍は、バーデン＝バーデン辺境伯ルートヴィヒ・ヴィルヘルムが指揮を執り、ライン川右岸でフランス軍の侵攻を阻止しようとしました。

しかし、戦況は膠着状態に陥ります。

バイエルン選帝侯の反乱とフランス軍の介入

膠着状態を打破したのは、ライン川から東に位置するバイエルン選帝侯領でした。バイエルン選帝侯マクシミリアン2世エマヌエルはフランスと通じて1702年に反乱を起こし、ドナウ川流域の都市を攻撃してオーストリアを脅かしました。フランス軍はこれに乗じて、ライン川を渡河してバイエルン軍と合流しようとしました。

フランスの将軍ヴィラールは、ライン川を南下してフリートリンゲンの戦いで帝国軍を破りましたが、損害が大きくストラスブールに撤退しました。

ケール包囲戦の勃発

1703年、ヴィラールは再び渡河を試みました。彼はタラール伯カミーユ・ドスタンをストラスブールに残留させてドイツ軍を牽制し、前回と同様のルートで南下してフリートリンゲンでライン川を渡り、北上して2月20日にストラスブールの対岸にある都市ケールを包囲しました。

帝国軍は抵抗することができず、3月10日に降伏しました。ケールを攻略したヴィラールは、シュヴァルツヴァルト（黒い森）を通過してバイエルン軍と合流しました。

戦略的重要性とオーストリアへの脅威

フランス・バイエルン軍がドナウ川で合流したことで、オーストリアは攻撃される危険にさらされ、神聖ローマ帝国は大きな危機に陥りました。ケール包囲戦は、単なる一都市の攻防にとどまらず、スペイン継承戦争全体の行方を左右する重要な戦いとなりました。

参考文献

* 友清理士『スペイン継承戦争 マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史』彩流社、2007年。

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