ゲイルスポート

ゲイルスポート：1180mの鬼才と、ハギノカムイオーとの宿命の対決

1979年4月22日生まれの競走馬、ゲイルスポート。その名は、幾多のレースで繰り広げられた劇的な走り、そして、ある名馬との因縁によって、競馬史に刻まれることとなった。

1200mの短距離戦において、ゲイルスポートは圧倒的なスピードを見せつけた。しかし、その真骨頂は、ゴール直前まで先頭をひた走りながら、惜しくも失速してしまうという、独特のレース展開にあった。このことから、1180mのスペシャリストと称されることもあった。まるで、短い距離で全力を出し切り、その瞬間の爆発的なパワーを見せることに特化した、燃え尽きるような走りだったといえるだろう。

1981年12月、競走馬としてデビューを果たしたゲイルスポート。デビューから3連勝を飾るなど、その潜在能力の高さを示した。しかし、彼の名を競馬史に刻むことになるのは、クラシック競走、皐月賞への挑戦からだった。

この皐月賞には、1979年のセリで当時日本最高価格となる1億8500万円で落札された、良血馬ハギノカムイオーが出走。圧倒的な人気を集めていた。しかし、ゲイルスポートの騎手、加賀武見は、レース前からハギノカムイオーへの闘志を燃やしていた。逃げの競馬を得意とするハギノカムイオーに対し、「あいつに競馬の厳しさを教え込む」と公言し、ハギノカムイオーを先頭に立たせないことを決意していたのだ。

レースが始まると、ゲイルスポートはスタート直後から先頭に躍り出た。しかし、レース中盤で失速。20頭中19着という結果に終わった。だが、皮肉にも、ハギノカムイオーもまた、先頭に立つことができず、16着という結果に終わっている。このレースは、ゲイルスポートの圧倒的なスピードと、加賀騎手のハギノカムイオーへの揺るぎない闘志を世に知らしめる結果となった。

続く東京優駿トライアルのNHK杯でも、ゲイルスポートはハギノカムイオーに逃げを許さず、レースを展開。結果は、ハギノカムイオーが12着に敗れ、東京優駿への出走を断念することになった。皐月賞とNHK杯でのハギノカムイオーとの死闘は、ゲイルスポートを「良血馬ハギノカムイオーを惨敗に追いやった天敵」として、競馬ファンに広く知らしめることになった。

東京優駿への出走を回避したゲイルスポートは、その後も短距離のレースに挑み続けた。1982年7月にはBSN杯を制覇。重賞競走でも活躍し、同年のCBC賞で3着、翌1983年のスプリンターズステークスで4着と好成績を残した。しかし、スプリンターズステークス出走後に挫石を発症。その後は成績が低迷し、条件戦で1勝するのみとなり、1984年9月のレースを最後に競走馬を引退した。

引退後のゲイルスポートの消息は、残念ながら現在も不明である。彼の短いながらも激しい競走生活は、多くの競馬ファンに鮮烈な印象を残し、今もなお語り継がれている。1180mという短い距離で、一瞬の輝きを放ったゲイルスポート。彼の物語は、競馬における一瞬の輝きと、その儚さ、そして、競走馬と騎手、そしてライバルというドラマ性を改めて私たちに教えてくれる。

参考文献
光栄編集部（編）『夢はターフを駈けめぐる3』 光栄、1994年7月 ISBN 4877191097
小笠原裕（編）『大川慶次郎語録』 芸文社、2002年4月 ISBN 4874655777
* 『競馬名勝負読本3 怒ってあきらめて笑っちゃうクセ馬＆イマイチくん編』宝島社〈別冊宝島 競馬読本シリーズ〉、1996年10月3日、42-43頁。ISBN 978-4796692779。

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