ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン

ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン：ドイツを代表する名門大学の歴史と伝統

ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンは、ドイツ・ニーダーザクセン州ゲッティンゲン市に位置する、1737年創立の由緒ある公立大学です。ハノーファー選帝侯ゲオルク・アウグスト（英国王ジョージ2世）によって設立され、ハレ大学をモデルに、科学を重視した教育機関としてスタートしました。

数学の中心地として世界に貢献

ゲッティンゲン大学は、法学、哲学、数学、物理学など幅広い分野で高い実績を誇ってきましたが、特に数学分野での貢献は顕著です。19世紀中頃から20世紀前半にかけては、フェリックス・クライン、ダフィット・ヒルベルト、ヘルマン・ミンコフスキーといった世界的な数学者たちが集まり、数学研究の中心地として世界をリードしました。彼らの業績は、現代数学の基礎を築く上で重要な役割を果たしています。

学問の府としての揺るぎない地位

第二次世界大戦中においても、ゲッティンゲン大学はヨーロッパにおける重要な学術拠点としての地位を維持していました。イギリスとドイツの間で、ケンブリッジ大学とゲッティンゲン大学は相互に爆撃しないという、いわば紳士協定が結ばれていたという逸話は、その学問的価値がいかに高く評価されていたかを物語っています。

伝統と革新の融合

現在、ゲッティンゲン大学は北ドイツ最大の州であるニーダーザクセン州を代表する大学として、その役割を担っています。南ドイツの大学が比較的保守的な校風であるのに対し、ゲッティンゲン大学は地理的な位置柄か、進歩的ながらも中道寄りの校風を持つとされています。1980年代には緑の党の拠点の一つにもなっていたことから、時代に合わせて柔軟に変化してきた歴史も伺えます。

世界に誇る大学図書館と貴重な資料

1734年設立の大学図書館は、約350万冊の蔵書を誇り、世界的に貴重な資料を数多く所蔵しています。その中には、世界で4冊しか現存していないグーテンベルク聖書や、グリム兄弟の草稿、ヒルベルトの書簡なども含まれています。これらの貴重な資料は、歴史研究や学術研究に欠かせない資源となっています。

10マルク紙幣に描かれた大学

1989年から発行されたドイツ連邦共和国の10マルク紙幣の表面には、カール・フリードリヒ・ガウスの肖像画と、ゲッティンゲン大学の校舎が描かれていました。これは、大学がドイツ社会に与えてきた影響の大きさを示す象徴的な事例と言えるでしょう。

博士号取得者の伝統的な儀式

ゲッティンゲン大学で博士号を取得した者は、市庁舎前にあるガチョウ娘リーゼルの銅像にキスをするという風習があります。1926年にはこの風習を禁止する条例が制定されましたが、現在では伝統行事として受け継がれ、取り締まりは行われていません。2004年の放火事件でリーゼル像は大きく破損しましたが、現在は修復され、元の姿に戻っています。

大学自治とゲッティンゲン七教授事件

1837年、ハノーファー王エルンスト・アウグストの政策に反対した7人の教授が追放・免職された「ゲッティンゲン七教授事件」は、大学の自治権の歴史において特筆すべき出来事です。グリム兄弟や物理学者ヴィルヘルム・ヴェーバーも含まれており、この事件は、大学の自治と学問の自由を守るための闘争の歴史を象徴する出来事となっています。

ノーベル賞受賞者を多数輩出

ゲッティンゲン大学は、これまでに45名ものノーベル賞受賞者を輩出しています。数学ではガウス、リーマン、クライン、ヒルベルト、物理学ではハイゼンベルク、プランク、化学ではブテナント、医学ではコッホなど、各分野で世界を代表する多くの著名な学者がこの大学で教鞭を執り、研究活動を行ってきました。

多様な分野での活躍

哲学者ショーペンハウアー、詩人ハイネ、物理学者オッペンハイマーなどもゲッティンゲン大学で学んだことで知られています。また、政治家として鉄血宰相ビスマルクやドイツ連邦首相シュレーダーなどもゲッティンゲン大学で学んでおり、各界で活躍する人材を多数育成してきた歴史があります。日本人では数学者の高木貞治や仁科芳雄なども在籍していました。

結論

ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンは、300年近くにわたる歴史の中で、世界をリードする研究成果を輩出し続け、数多くの優秀な人材を育成してきた、ドイツを代表する名門大学です。その伝統と革新は、今後も世界に大きな影響を与え続けることでしょう。

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