ゲシン・ジェンキンス

ゲシン・ジェンキンス（Gethin Jenkins）は、1980年 11月17日にウェールズのランビット・ファドレで生を受けた、ウェールズラグビー界が誇る元プロフェッショナルラグビーユニオン選手です。彼がプレーしたポジションは、ラグビーのフォワードパックにおいて最も重要な役割の一つを担うプロップ（PR）。特に左プロップとしての評価が高く、スクラムの最前線でチームの土台を支える、文字通り縁の下の力持ちとして活躍しました。身長は188cm、体重は121kgと、プロップに求められる屈強な体格を備えており、そのフィジカルを生かしたパワフルなプレーが持ち味でした。

彼のプロキャリアは、ウェールズ国内のクラブで始まりました。ポンティプリッドでのプレーを経て、地域代表チームであるセルティック・ウォリアーズに所属。その後、ウェールズを代表する地域チームの一つ、カーディフ・ブルーズ（現在のカーディフ・ラグビー）へ移籍し、そこで長く中心選手として活躍します。カーディフ・ブルーズでは、国内リーグや欧州クラブ大会においてチームの成功に貢献し、その卓越した技術とリーダーシップを発揮しました。キャリアの一時期には、フランスの強豪クラブであるRCトゥーロンへの移籍も経験。世界最高峰のリーグであるトップ14での挑戦は、彼の選手としての幅をさらに広げる貴重な経験となりました。フランスでのシーズンを終えた後、再び古巣であるカーディフ・ブルーズへ戻り、選手生活の晩年を過ごしました。

ゲシン・ジェンキンスのキャリアにおいて、特に輝かしいのが国際舞台での活躍です。ウェールズ代表として、彼は歴代でも非常に多い129ものキャップ（代表戦出場数）を獲得しました。これはウェールズ代表の選手の中でも屈指の記録であり、長年にわたり代表チームの不動のプロップとして君臨し続けたことの証です。彼の代表キャリアは、ウェールズが多くの成功を収めた時期と重なっており、その強固なスクラムとフィールドプレイの両面での貢献は計り知れません。

ラグビーワールドカップには、2003年大会、2007年大会、2011年大会、そして2015年大会と、実に4大会連続でウェールズ代表として出場するという偉業を成し遂げました。これはワールドカップの歴史においても非常に稀な記録であり、彼の長寿と一貫した高いパフォーマンス、そしてチームにとっての不可欠な存在であったことを物語っています。4度のワールドカップ出場は、異なる世代の選手たちと共にプレーし、チームの継続的な強化に貢献したことを意味します。

さらに、ゲシン・ジェンキンスは、イングランド、スコットランド、アイルランド、そしてウェールズの精鋭から選ばれる伝統あるチーム、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズにも選出された経験を持っています。ライオンズに選ばれることは、その時代のホームユニオンにおける最高の選手であることの証であり、彼の国際的な評価がいかに高かったかを示しています。ライオンズの一員として、南半球の強豪国とのテストシリーズに挑んだ経験は、彼のキャリアにおけるハイライトの一つと言えるでしょう。

グラウンド上では、プロップとしての本分であるスクラムでの圧倒的な強さだけでなく、オープンプレーでのタックルやボールキャリー、さらにはジャッカル（ブレイクダウンでのボール奪取）でも高い能力を発揮しました。彼の献身的なディフェンスとアタックへの積極的な関与は、ウェールズ代表や所属クラブに多くの勝利をもたらしました。長年にわたる厳しいプレーにもかかわらず、彼は高いレベルを維持し続け、多くの後輩選手たちの模範となりました。

2018年、長きにわたる現役生活に終止符を打ち、スパイクを脱ぎました。ウェールズラグビー界における彼の功績は大きく、史上最高のプロップの一人として記憶されています。

ゲシン・ジェンキンスは、その強靭なフィジカル、高度な技術、そして何よりも揺るぎない精神力で、ウェールズラグビーの黄金期を支えた偉大な選手でした。彼の残した記録と影響力は、今後も語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索