ゲド戦記 (映画)

映画『ゲド戦記』の概要

『ゲド戦記』（英題：Tales from Earthsea）は、スタジオジブリによって制作された長編アニメーション映画で、2006年7月29日に劇場公開されました。この映画は、アーシュラ・K・ル＝グウィンの小説『ゲド戦記』の主に第3巻、「さいはての島へ」を原作とし、また宮崎駿の絵物語『シュナの旅』を参考にした作品です。本作は宮崎吾朗が監督・脚本を手掛け、独自の解釈に基づいたストーリーが展開されます。

あらすじ

映画の物語は、主人公アレンが心の内にある“影”と向き合う過程を描いています。彼はエンラッドの王子として、父王を無意識に手にかけた後、国を捨てて放浪の旅に出ます。旅の途中で彼はヒロインのテルーと出会い、心に傷を持つ彼女との交流を通じて自らの心の光を取り戻していきます。アレンとテルーはアースシーの均衡を崩してしまった災いの根源を探し、与えられた試練を乗り越えながら成長していくのです。

登場人物

映画には個性的なキャラクターが多数登場します。

• - アレン（レバンネン）: 映画の主人公であり、王子。心の影を持ち、自身の過去に向き合う旅を経て成長していきます。
• - テルー（テハヌー）: ヒロインで、顔に火傷の痕があります。彼女もまた、自身のトラウマに苦しんでおり、アレンとの関わりを通じて少しずつ心を開いていきます。
• - ハイタカ（ゲド）: アースシーの大賢人で、アレンと共に旅をする重要なキャラクターです。彼は物語の進行において、アレンの導き手の役割を果たします。
• - クモ: 永遠の命を求めて禁断の魔法を使う魔法使いで、主人公たちの敵になります。彼の行動が物語の軸となり、アレンとハイタカの旅に影響を与えます。

原作との相違点

本作は原作の要素を残しつつも、劇中の情節やキャラクターの設定に多くの変更が見られます。たとえば、アレンの影の描写や父王を殺すというオリジナルの設定は映画特有の要素です。原作ではアレンが父を殺す展開は存在せず、父の指示を受けて賢人ゲドに会いに行く流れになっています。また、テルーの描写も異なり、映画では年齢が近くデザインはジブリのヒロイン特有のものとなっています。

スタッフと制作経緯

監督の宮崎吾朗は、父である宮崎駿から強い影響を受けており、本作の制作にあたって親子間の葛藤が話題となりました。宮崎吾朗が監督に選ばれたことに対して、社内外からは疑問の声が上がり、特に宮崎駿は彼の監督能力に懐疑的でした。しかし、吾朗は自身の力を証明し、映画作りを進めていくこととなります。この作品は、彼にとって初の監督作品であり、ジブリの新たなスタイルを追求する重要な一歩となりました。

興行成績と評価

日本国内では公開初日に好調な興行収入を記録しましたが、最終的な成績は思ったほど伸びず、多くの映画批評家からは厳しい評価を受けました。特に原作者ル＝グウィンからの反響は辛口で、映画の内容や登場人物の動機について批判的なコメントがされました。一方、アニメーションとしての美しさや情緒豊かな音楽については評価されている部分もあります。

結論

映画『ゲド戦記』は、独特な物語構成とキャラクター描写を持つ作品であり、アニメーションとしての技術や表現は高いものの、原作のエッセンスをどのように解釈したのかは論争の的となりました。親子の関係性や自己成長をテーマにした深いコンセプトが含まれた作品であり、今後も多くのファンに語り継がれることでしょう。

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