ゲベル・バルカル

ゲベル・バルカル：古代クシュ王国の聖地

ゲベル・バルカルは、スーダン北部にそびえ立つ高さ98mの小山です。ナイル川の屈曲部に位置し、ハルツームの北約400kmに位置しています。この地は、紀元前15世紀にエジプト第18王朝のトトメス3世によって征服され、ナパタという都市が建設されました。その後、ナパタはクシュ王国の首都として繁栄しました。

遺跡群と発掘調査

ゲベル・バルカル周辺には、少なくとも13の神殿と3つの宮殿を含む遺跡群が点在しています。これらの遺跡は、1820年代にはヨーロッパの探検家によって記録されていましたが、本格的な発掘調査は、20世紀初頭のジョージ・レイスナーの登場を待つ必要がありました。レイスナーは、ハーバード大学とボストン美術館の共同発掘隊を率い、この地の調査に尽力しました。その後も、1970年代にはローマ大学、1980年代にはボストン美術館の調査隊が発掘調査を引き継ぎ、現在も調査が継続されています。

世界遺産「ゲベル・バルカルとナパタ地方の遺跡群」

2003年、ゲベル・バルカルは、周辺のナパタ地方の遺跡群とともに、ユネスコの世界遺産に登録されました。登録対象は以下の通りです。

ゲベル・バルカル (Gebel Barkal):
登録面積121ha、緩衝地域40ha。アモン神殿のような大神殿は地元民から神聖視されています。
エル＝クッル (El-Kurru):
登録面積4.5ha、緩衝地域6.5ha。ナパタ文化期の王族の墓を含む34基の墓があります。レイスナーによって発掘されました。
ヌリ (Nuri):
登録面積17ha、緩衝地域なし。レイスナーが発掘したナパタ文化期の82基の墓（ヌビアのピラミッド）があります。
サナム (Sanam):
登録面積20ha、緩衝地域なし。メロエ市内にある墓所遺跡で、「宝物」と呼ばれる巨大建築物があります。
ズマ (Zuma):
登録面積20ha、緩衝地域なし。メロエ文化末期（4世紀）以降の墓所遺跡ですが、発掘は不十分です。

登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するものであること。

ゲベル・バルカルは、古代クシュ王国の歴史と文化を今に伝える貴重な遺跡群であり、その普遍的な価値は世界的に認められています。

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