ゲリマンダー

ゲリマンダーとは

ゲリマンダーとは、選挙において特定の政党や候補者に有利になるように選挙区を操作する手法を指します。この言葉は1812年、アメリカのマサチューセッツ州知事エルブリッジ・ゲリーが自身の政党に有利な区割りを行ったことに由来します。選挙区が不自然な形になることから、「ゲリマンダー」という言葉が生まれました。

ゲリマンダーの目的と手法

ゲリマンダーの主な目的は、選挙区の区割りを調整することで特定の政党に議席を偏らせることです。小[[選挙区制]]を採用している場合、例えば、一つの選挙区から一人しか当選しないシステム下では、特定の政党に投票する傾向が強い地区を分け、異なる選挙区に吸収させることにより、実質的な投票力を削ぐことが可能になります。

具体的には、議席を獲得するために、一票の格差を意図的に操作することがあります。例えば、特定の政党の支持者が集中している地域を一つの選挙区として設定し、その選挙区ではその党が当選可能とし、残りの選挙区ではその党が有利になるように区割りを調整します。こうすることで、自党の支持者は得票はされるが実際には敗北し、他の選挙区では有利に立ち回ることが可能です。

こうした手法の中で、特に「クラッキング（分割）」と「パッキング（詰め込み）」という二つの戦略がよく使われます。クラッキングは敵対政党の強い地区を細分化して他の選挙区に分散させる手法で、逆にパッキングは敵対政党の支持者を一つの選挙区に集約し、その選挙区での勝利をあきらめさせる戦略です。これによって、選挙結果をコントロールし、特定の政党に有利な結果を引き出します。

ゲリマンダーの国際的事例

アメリカ

アメリカでは、州議会により選挙区の区割りが決定されるため、州の政治的動向がゲリマンダーを形作ることが頻繁にあります。人種や社会階級の違いが居住区に色濃く反映されているため、特定の政党の支持基盤を持つ地域と対立する地域の選挙区を巧妙に調整することで、票を無効にしたり、議席を増やしたりできます。

過去には、南部再建期において政治権力を持たないようにするために、黒人の票を無効化するためのゲリマンダーが行われたこともあります。進展がある一方、未だにゲリマンダーが政治的な手段として使われる背景には、利害関係からくる州議会の操作があります。

日本

日本の衆議院では、長らく中[[選挙区制]]が採用されていたため、ゲリマンダーはあまり発生していませんでしたが、1996年に小[[選挙区制]]度が導入されると、その区割りに対する疑念や非難が表に出るようになりました。与党に有利な制度設計が行われているとする批判が多々あり、実際に「トコマンダー」、「ハトマンダー」などといった言葉が使われました。

その他の国々

韓国やマレーシアでも、地理的な区割りを利用したゲリマンダーが行われ、多くの批判を受けています。特に、マレーシアでは与党が特定のコミュニティに対する影響力を強化するために、選挙区を意図的に操作してきました。

ゲリマンダーの影響

ゲリマンダーは選挙における公平性を危うくし、実質的に一定の政治的利益をもたらす手法です。それにより民主主義の原則が損なわれ、選挙の信頼性が低下します。今後、各国での選挙制度改革が求められ、より透明性のあるシステムの実現が期待されます。

もう一度検索