コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群

コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群

コア渓谷とシエガ・ベルデの先史時代の岩絵遺跡群は、ポルトガル北東部のコア川流域と、スペインのシエガ・ベルデに位置する、ユネスコの世界遺産です。この遺跡群は、旧石器時代に描かれた数千点に及ぶ線刻画から成り、その規模と芸術性は世界的に高く評価されています。

コア渓谷の岩絵群

1980年代後半、コア川の渓谷で線刻画が発見されました。これらの絵は、馬、牛、その他の動物、人物、そして抽象的な図像など多岐にわたり、1万年から2万年前のものとされています。1995年以降、考古学者チームが調査と分類を進め、一部は観光客向けに公園として整備されています。

発見と論争

この遺跡群の発見は、ダム建設という危機を招きました。もしダムが建設され水位が上昇すれば、線刻画は水没してしまうからです。この危機を察知した考古学者ネルソン・ラバダは、報道機関やユネスコに報告書を提出し、国内外で大きな議論を呼びました。
ユネスコの専門家の中には、水位上昇が線刻画を保護すると主張する者もいましたが、最終的にポルトガル政府は建設を中止し、遺跡の保全と公開を決定しました。この出来事は、遺跡保護の重要性を世界に訴える契機となりました。

岩絵の詳細

岩絵は、主にウマ、ウシ、ヤギなどの動物が描かれています。ケブカサイ、バイソン、メガロケロス、トナカイ、ネコ科の動物、人物、抽象的な図像なども見られます。線刻画は、断崖に刻まれ、大きさは15cmから180cmまで様々です。太い線で描かれたものもあれば、細く流麗な線で描かれたものもあります。これらの絵は、約2万年前まで遡ることが分かっています。

遺跡の重要性

この遺跡の重要性は、その希少性と規模にあります。先史時代の洞窟壁画は数多く存在しますが、青空の下にある岩絵群は極めて珍しいです。メキシコのマソウコ、フランスのフォルノル・オー、スペインのドミンゴ・ガルシアなどが同様の例として挙げられますが、いずれもコア渓谷遺跡の規模には及びません。
考古学者たちは、この場所が先史時代の人々にとっての聖域であったと考えています。

立地と構成

コア渓谷の遺跡は、下流域の約17kmにわたって広がり、16の岩絵遺跡群で構成されています。

Broeira
Canada do Inferno/Rego da Vide
Faia
Faia (Vale Afonsinho)
Vale das Namoradas
Vale de Moinhos
Vale de Figueira/Texiugo
Ribeira de Piscos/Quinta dos Poios
Meijapão
Fonte Frieira
Penascosa
Quinta da Ervamoira
Salto do Boi (Cardina)
Ribeirinha
Quinta do Fariseu
Quinta da Barca

登録基準

この世界遺産は、以下の世界遺産登録基準を満たし、登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作である。
(3) 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠である。

脚注

Advisory Body Evaluation, 1998.
Decision - Report of the 22nd Session of the Committee, 1998.

外部リンク

コア渓谷考古学公園・公式サイト（英語・ポルトガル語）
Paleolithic Art in the Côa Valley – コインブラ大学考古学研究所（ポルトガル語とフランス語）

もう一度検索