コウライオヤニラミ

コウライオヤニラミ（高麗親睨）

コウライオヤニラミ（学名：Coreoperca herzi）は、ケツギョ科オヤニラミ属に分類される淡水魚です。主に朝鮮半島に分布する固有種として知られていますが、近年、日本国内の一部地域にも外来種として定着し、問題を引き起こしています。

形態的特徴

近縁種であるオヤニラミと姿形は似ていますが、コウライオヤニラミはより大型で、最大では全長30センチメートルに達します。体つきはオヤニラミに比べて体高が低く、比較的大きな頭部を持つ点が特徴です。幼魚期には縞模様が見られますが、成長とともにこの縞模様は消失し、体側には不規則な白い斑点が現れるようになります。

分布と生息環境

本種の自然分布域は朝鮮半島に限られており、北は鴨緑江まで確認されています。清らかで流れのある川の上流から中流域に位置する、岩や石が多い場所を好んで生息しています。朝鮮半島の南部では、オヤニラミと同一の水域に生息する場所も見られますが、コウライオヤニラミはより流れの速い場所を、オヤニラミは比較的緩やかな流れの場所を選択することで、互いの競争を避けていると考えられています。したがって、これら2種の共存には、多様な環境が存在する河川の維持が不可欠であり、河川環境が単純化すると、どちらか一方のみが優占する状況が生じやすくなります。

日本国内では、2017年に宮崎県都城市内の大淀川水系支流で初めてその存在が確認されました。これは観賞魚として輸入された個体が意図的あるいは偶発的に放流された結果と推測されています。翌2018年には、新たに生まれたと思われる小さな個体も見つかり、日本国内での繁殖が確実となりました。

生態

コウライオヤニラミは普段、川底の石などに寄り添うようにして静止していることが多い魚です。しかし、獲物となる小魚、エビ類、水生昆虫などが近づくと、素早く突進して捕食します。非常に縄張り意識が強く、同種や他種の魚類と積極的に争う性質を持っています。食性は、同じオヤニラミ属の他種と同様に、主に小型の動物を捕食する肉食性です。

繁殖期は初夏にあたり、水温が18℃から23℃程度になった頃に産卵活動を行います。繁殖に適した場所は、流れの速い岩場です。比較的大きな石の下を選び、直径2.6～2.9ミリメートルほどの卵を産み付けます。また、本種の卵は、在来種のムギツクやクロムギツクによって托卵先として利用される例が報告されています。

外来種としての影響と対策

日本国内、特に大淀川水系に定着したコウライオヤニラミは、その強力な捕食能力により、在来の生態系に深刻な影響を与えています。大淀川水系の固有種であるオオヨドシマドジョウをはじめとする多くの在来魚類や水生生物が食害の対象となっています。捕獲された個体の胃の内容物調査からは、様々な在来水生動物が発見されています。さらに、環境DNAを用いた調査では、コウライオヤニラミが多く生息する水域では、他の魚類の生息数が少ない傾向にあることが明らかになっています。

こうした状況を受け、宮崎県内水面漁場管理委員会は、在来生物の保全と生態系への悪影響を抑制するため、2024年8月5日より、コウライオヤニラミの生きた状態での区域外への持ち出しや河川への放流を禁止する措置を講じました。これは、外来種による生態系かく乱を防ぐための重要な一歩と言えます。

コウライオヤニラミは、その観賞価値から人為的な移入が行われたと考えられますが、その結果、自然環境において予期せぬ問題を引き起こしています。生態系への影響を最小限に抑えるためには、これ以上の分布拡大を防ぐための対策と、すでに定着した場所での適切な管理が求められています。

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