コウリンカ

コウリンカ（紅輪花）

コウリンカ（学名：Tephroseris flammea subsp. glabrifolia）は、キク科オカオグルマ属に分類される多年草です。タカネコウリンギク（学名：T. flammea subsp. flammea）の亜種とされ、以前はキオン属に分類されていました。

特徴

コウリンカは、細く短い根茎から多数の根を伸ばします。茎は直立し、高さは30～60cmほど。ほとんど枝分かれしません。茎には毛がほとんどなく、あっても上部に少しだけ。下部は角ばっており、紫色を帯びています。根元から出る葉はスプーンのような形をしており、縁には鈍い鋸歯があります。葉柄には翼がありますが、花が咲く頃には枯れてしまいます。茎につく葉は10個ほどで、互い違いに生えます。下部の葉は、広倒披針形で、長さ10～16cm、幅18～35mm。先端は丸く、縁には不揃いで小さな鋸歯があります。葉の付け根は茎を抱き込むようになっています。茎の中部につく葉は披針形で、基部は茎を抱きます。葉の両面にはクモのような毛が生えています。

花期は7月から9月で、茎の先に6～13個の頭状花序が散形状に集まって咲きます。頭花の直径は3～4cm。花柄は5～16cmです。総苞は鐘形で、長さ5～8mm。同属のタカネコウリンカにある総苞基部の苞葉はありません。花冠は橙黄色で、10～15個の舌状花が反り返るように咲きます。舌状花の長さは17～22mm、幅は2mmほど。果実は長さ3mmほどの楕円状の痩果で、密な毛が生えています。冠毛は汚白色で、長さは6.5～8mmです。染色体数は2n=46です。

分布と生育環境

日本では本州の温帯域に分布しており、山地の日当たりの良い、湿り気のある草原に生息しています。国外では朝鮮半島に分布しています。

名前の由来

和名の「コウリンカ（紅輪花）」は、赤い車輪のように見える舌状花に由来します。牧野富太郎は、「花の色が丹色であるため」と説明しています。種小名のflammeaは「鮮緋色の、火焔色の」、亜種名のglabrifoliaは「無毛の葉の」という意味です。

種の保全状況評価

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類 (VU)に指定されています。また、多くの都道府県でレッドデータリストに掲載されており、絶滅危惧IA類(CR)や絶滅危惧IB類(EN)に指定されている地域も少なくありません。生育地の減少や環境の変化により、個体数が減少していることが懸念されます。特に東京都ではすでに絶滅(EX)しています。

都道府県別レッドデータリスト選定状況

福島県：絶滅危惧IB類(EN)
茨城県：絶滅危惧IA類
栃木県：絶滅危惧II類(Bランク)
群馬県：絶滅危惧IB類(EN)
埼玉県：絶滅危惧I類(CE)
東京都：絶滅(EX)
神奈川県：絶滅危惧IA類(CR)
新潟県：絶滅危惧II類(VU)
山梨県：準絶滅危惧(NT)
長野県：留意種(N)
静岡県：絶滅危惧IB類(EN)
京都府：絶滅寸前種
兵庫県：Aランク
鳥取県：絶滅危惧I類(CE+EN)
岡山県：絶滅危惧I類
広島県：絶滅危惧I類(CE+EN)

タカネコウリンギク

タカネコウリンギク（学名：Tephroseris flammea subsp. flammea）は、コウリンカの分類上の基本種です。コウリンカとは対照的に、茎に長くて縮れた毛が密生しており、クモ毛もみられます。茎の高さは15～40cm。花期は7～8月で、茎の上部に2～7個の頭花が散形状に咲きます。頭花の直径は30～32mm。総苞は長さ5mmで、筒状花、舌状花ともに鮮やかなオレンジ色です。舌状花冠は長さ13～22mm、幅1.5mmで、やや反り返っています。冠毛の長さは約5.5mm。染色体数は2n=48です。日本では九州の阿蘇山や九重山の山麓などの火山性草原に分布し、国外では朝鮮半島、中国大陸北部、ロシア極東地方に分布しています。最終氷期に大陸から分布を広げ、氷期終了後も九州北部の草原に残ったと考えられています。環境省のレッドリストでは、絶滅危惧IB類 (EN)に指定されています。

都道府県別レッドデータリスト選定状況

熊本県：絶滅危惧IA類(CR)
大分県：絶滅危惧II類(II)

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本III 合弁花類』、1981年、平凡社
高橋勝雄『山溪名前図鑑 野草の名前 夏』、2003年、山と溪谷社
門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名－学名インデックス」（YList）
日本のレッドデータ検索システム

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