コオニヤンマ

コオニヤンマ（小鬼蜻蜓）

コオニヤンマ（学名: Sieboldius albardae）は、蜻蛉目サナエトンボ科に属するトンボの一種で、日本や東アジアの温帯地域に広く分布しています。一般的には大型のトンボとして知られ、その姿や生態が多くの自然愛好家の関心を集めています。

分類について

コオニヤンマという和名は「小さいオニヤンマ」を意味します。しかし、分類上はオニヤンマ科やヤンマ科には含まれていません。学名の属名である「Sieboldius」は、日本の文化や生物について研究したフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの名前から由来しています。一方、種名の「albardae」は昆虫研究家のアルバルダへの献名です。

興味深いことに、エドモン・ド・セリ・ロンシャンが記載した際、日本のコオニヤンマとボルネオに生息する同属の種を取り違えてしまいました。これにより、日本産のコオニヤンマは誤って「S. japponicus」という名で記載されることになり、混乱を生んでいます。これらの学名は一旦決定されると変更できないため、現在もこの混乱が続いています。

分布

コオニヤンマは、日本、中国、朝鮮半島、さらには極東ロシアに至るまでの広い範囲に生息しています。日本では、北海道から九州まで、さらに佐渡島や屋久島などの周辺離島でも見ることができます。とはいえ、北海道や山岳地帯ではその分布が限られていることもあります。

形態

成虫のコオニヤンマは、オスが81-93 mm、メスが75-90 mmほどの体長を持ち、そのサイズはサナエトンボ科の中でも最も大きいものです。頭部が体に比べて小さく、後脚が長いのが特徴で、未熟期には深緑色の複眼が、成熟期には澄み渡った緑色に変わります。

この種はオニヤンマに似ていますが、コオニヤンマの複眼は接触せず、オニヤンマでは左右の複眼が接する点が大きな違いです。また、休息時の姿勢にも違いがあり、オニヤンマは木の枝にぶら下がるように止まりますが、コオニヤンマは腹を水平に保ちながら止まります。

幼虫期（ヤゴ）は、広葉樹の枯れ葉に似た形状を持ち、特に幅広く平たい体形をしています。コヤマトンボやオオヤマトンボとは似ていますが、触角が丸いうちわ型であることや、前脚と中脚が短い点で識別可能です。

生態

成虫は5月上旬から出現し、9月まで観察されます。羽化後は水辺近くの草むらなどで活発に摂食を行い、成熟個体は河川の上流から中流域で静止していることが多いです。特に、河原の石の上や枝の先に留まることが多く、北海道では湖岸近くでも見かけられます。雌は単独で打水産卵を行う習性があります。

一方、幼虫は河川の流れが緩やかな場所で、転石の下や落ち葉の層中に潜んでいます。山あいの清流から農村部のやや汚れた川まで見られる一方、都市の汚染の激しい川ではあまり見かけません。他の水生昆虫を捕食して成長し、成虫になるまでには2-4年を要します。また、終齢幼虫の腹部は平たいものの、羽化時にはすでに細長くなっているのが特徴です。

コオニヤンマは、その独自の生態と美しい姿で多くの人々に愛されるトンボです。自然界において重要な役割を果たしており、その生態についてさらに知識を深めることは、自然保護につながります。

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