ヤゴ

ヤゴとは

ヤゴとは、トンボ目（蜻蛉目）の特にトンボ亜目（不均翅亜目）の幼虫を指す通称です。肉食性の水生昆虫として知られ、その語源は、成虫であるトンボを指す「ヤンマの子」を略したものです。別名としてタイコムシやワラジムシとも呼ばれますが、甲殻類のワラジムシとは全くの別種です。

ヤゴの一般論

昆虫の幼虫には、成虫とは全く異なる姿を持つものが多く存在します。ヤゴもその一つで、外見や生態は成虫と大きく異なりますが、トンボ目の幼虫であることは共通しています。ただし、トンボ目の中でもイトトンボ亜目（均翅亜目）の幼虫は、姿が大きく異なるため、本来のヤゴとは異なるのではないかとする説もあります。しかし、現在ではトンボ目の幼虫を総じてヤゴと呼ぶことが一般的です。

トンボは成虫になると空中での生活に適応しますが、幼虫であるヤゴは水中で生活する水生昆虫です。不完全変態であるため、基本的には成虫と変わらない構造をしていますが、外見は大きく異なります。ヤゴは肉食で、主に小型の水生昆虫や小魚の体液を捕食します。

ヤゴの形態には様々なものがありますが、共通する特徴として、以下のような点が挙げられます。

下唇が折り畳み式になっており、先端の鋏状の牙で獲物を捕らえることができる。
鰓を持ち、水中で呼吸ができる（体内に鰓を持つ種類もいる）。
脚は水底を歩くのに適した形をしており、あまり泳ぎは得意ではない。

ヤゴの幼虫期間は数週間から数年に及びますが、最終的には陸に上がり、羽化して成虫（トンボ）になります。羽化する際には、抜け殻を残すため、水辺で探すと見つけることができます。トンボ、ヤンマ、イトトンボなどは脱皮の際に抜け殻に腹部で引っかかり、背後にぶら下がる姿勢を取ります。一方、サナエトンボ類は抜け殻から腹部を使って立ち上がり、ぶら下がらないのが特徴です。

ヤゴの多様な形態

トンボの成虫は、分類群の違いによる外見の差はあまり大きくありませんが、ヤゴは分類群によって姿が大きく異なります。特にイトトンボ亜目とトンボ亜目では外見上の違いが顕著です。例えば、ギンヤンマ、オニヤンマ、コオニヤンマの成虫は似ていますが、幼虫は全く異なる姿をしています。

イトトンボ亜目

イトトンボやカワトンボのヤゴは、一般的なヤゴとは異なる外見をしています。頭部は左右に長く棒状で、体は前後に細長い棒状、または管状です。足は細長く、歩行に使われますが、全身をくねらせて泳ぐものもいます。イトトンボ類は体が細長く、柔らかい印象で、褐色から緑色をしています。カワトンボ類はやや短く、がっしりとしており、茶褐色から黒っぽい色をしています。

イトトンボ亜目のヤゴの大きな特徴は、腹部末端にある3つの細長い扁平な気管鰓です。この鰓は、自切することができ、捕獲時などに容易に外れてしまいますが、幼虫の生存には影響ありません。また、ミナミカワトンボ科のヤゴは、渓流に生息し、体がやや扁平で、カゲロウの幼虫に似ています。さらに、腹部の下面に節ごとに一対の腹鰓を持っています。

トンボ亜目

トンボ亜目のヤゴは、体が太短く、あまり体をくねらせて泳ぎません。腹部末端には、尾肢などが刺状の突起の束となっています。鰓は体外にはなく、直腸の内側にある皺状の突起である気管鰓で呼吸します。呼吸のための水は肛門から吸い込み、また肛門から噴出させ、その噴出を利用して素早く泳ぐこともできます。

トンボ亜目のヤゴは、さらに下位グループによって外見が異なります。

サナエトンボ科・ムカシトンボ科：体が細長くやや扁平で、足は短め。砂や泥に潜るものが多く、動きは鈍い。コオニヤンマの幼虫は腹部が団扇状に広がる独特の姿をしています。
ムカシヤンマ科・オニヤンマ科：体が円筒形で長く、足は短め。全身に短い毛が生えています。
ヤンマ科：体が円筒形で、頭と胴の間がややくびれています。頭は丸く、目が大きいです。動きは俊敏です。
エゾトンボ科：体が扁平で前後に短く、足が長い。アシダカグモのような姿をしています。
トンボ科：体は楕円形くらいで、やや扁平。足はそこそこかやや長めです。

参考文献

井上清・谷幸三 『トンボのすべて』 トンボ出版、1999年、ISBN 4-88716-112-3。

外部リンク

神戸のトンボ

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