コキーコヤスガエル

コキーコヤスガエル：魅惑の鳴き声と侵略性

概要

コキーコヤスガエル(学名: Eleutherodactylus coqui)は、プエルトリコに生息する固有種のカエルです。夜間に「コキー」と聞こえる特徴的な大音量の鳴き声で知られ、プエルトリコでは国獣として国民に愛されています。しかし、その一方で、ハワイなどへの侵略的外来種としても深刻な問題を引き起こしています。本記事では、コキーコヤスガエルの形態、分布、生態、鳴き声、そして外来種問題について詳細に解説します。


形態

雄は体長30～37mm、雌は36～52mmと雌の方がやや大型です。この体格差は、繁殖行動における雄のエネルギー消費の大きさが影響していると考えられています。体色は灰色から灰褐色で、指先に吸盤を持ち、滑りやすい場所にも容易に登ることができます。水かきは発達しておらず、泳ぎは苦手です。


分布

コキーコヤスガエルはプエルトリコ固有種であり、ビエケス島やクレブラ島などに広く分布しています。しかし、乾燥した森林地帯では比較的少ないです。 残念なことに、外来種としてヴァージン諸島、イスパニョーラ島、フロリダ、そしてハワイ諸島にも分布を広げており、その個体密度は驚くほど高いです。特にハワイでは、1ヘクタールあたり9万匹という驚異的な密度に達している地域もあります。これは、ハワイにおいて天敵や競争相手が少なく、豊富な餌があることが要因として考えられています。プエルトリコでは1ヘクタールあたり2万匹と推定されています。生息環境への適応能力も高く、湿潤な環境から乾燥した環境、山岳地帯から都市部まで幅広く生息しています。標高の高い場所にも生息し、プエルトリコでは海抜1200m、ハワイでも海抜1170mまで確認されています。


生態

コキーコヤスガエルは夜行性で、主に節足動物を捕食します。幼体はアリなどの小さな昆虫を食べるのに対し、成体になるとクモ、ガ、コオロギ、カタツムリ、さらには小型のカエルなども捕食対象となります。興味深いことに、卵を守っている雄は、栄養補給のために自分の守っている卵の一部を食べてしまうことがあるそうです。また、調査によると、夜間に鳴いている雄は、鳴いていない雄に比べて餌の摂取量が18％少ないことが分かっています。繁殖は周年可能ですが、特に雨季に活発になります。一度に16～40個の卵を産み、8週間ごとに年に6回も繁殖を行うことができます。雄は、他の個体やカタツムリから卵を保護する行動も見られます。体内受精を行い、約17～26日後に卵を産みます。卵から小さなカエルとして孵化し、オタマジャクシの段階を経ません。孵化直後は短い尻尾がありますが、すぐに消失します。卵は植物の上や、時には鳥の巣に産み付けられます。


鳴き声

コキーコヤスガエルの雄は、特徴的な「コキー」という鳴き声を発します。「コ」の部分は縄張り主張、「キー」の部分は雌への求愛を目的としていると考えられています。彼らの聴覚器官は、雌雄で最も鋭敏な周波数が異なるため、この2種類の音を使い分けていると推測されています。鳴き声は、雌を引き寄せたり、縄張り争いに使われたりします。縄張り争いは、一定のリズムで鳴き続けることができなくなった方が敗者となります。


外来種問題

コキーコヤスガエルは、ハワイなどの侵入地において、在来の無脊椎動物を大量に捕食し、生態系に深刻な影響を与えています。さらに、クマネズミやジャワマングースなどの他の外来種にとっての餌資源にもなっています。また、そのけたたましい鳴き声は騒音公害を引き起こす原因にもなっています。日本においては、外来生物法により特定外来生物に指定されており、飼育は禁止されています。


結論

コキーコヤスガエルは、その独特の生態と鳴き声で知られる魅力的なカエルですが、侵略的外来種としての側面も持ち合わせています。その生態系への影響と、人間社会への影響を理解し、適切な管理を行うことが重要です。

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