コクラン (組織)

コクラン（Cochrane）について

コクランは、治療や予防に関する医療情報を整理し、公布する国際的な組織です。1993年にイギリスで設立され、その活動はイギリスの国民保健サービス（NHS）の根拠に基づく医療（EBM）政策の一環として開始されました。特に、ランダム化比較試験（RCT）を中心にした臨床試験を収集し、評価することで知られています。これにより作成された「コクランレビュー」は、医療従事者、政策決定者、そして一般の人々にとっても理解しやすい形で科学的エビデンスを提供しています。

現在、コクランは世界中の50か国以上に支部を持ち、130以上の国の科学者が参加している大規模なネットワークです。その活動の中で、8000件以上のメタアナリシスが実施され、その結果がコクランレビューとして発表されています。国際的な非営利団体として、自立した資金調達や利益相反を避けることに重きをおいており、信頼性の高い情報の提供を目指しています。

システマティック・レビューの技法

コクランが導入した「システマティック・レビュー」は、特定の医療課題に関連する研究結果を網羅的に収集し、質を査定して統計的にまとめる手法です。この方法により、文献の質が保たれ、最も信頼のおける情報を提供することが可能になります。1994年には「システマティック・レビュー」に関する論文が出版され、以降この手法が医療のエビデンス体系において重要な役割を果たすようになりました。

コクラン・ライブラリー

コクラン・ライブラリーは、コクランレビューや他の関連資料を収集した情報の宝庫です。かつてはCD-ROMで販売されていましたが、今ではウェブサイトを通じてオンラインでのアクセスが主流になっています。日本国内では多くの大学や病院で法人契約を結んでおり、レビュー記事の抄録部分は一般に無料で公開されています。特に、日本コクランセンターが実施する日本語翻訳は、多くの利用者に役立っています。

影響力と批判

コクランは影響力のあるデータベースとして、常に最新のエビデンスを医療分野に提供し続けています。近年では、コクランを巡る批判も存在しましが、それも組織の透明性や倫理基準の向上を求める声の一環として捉えられています。特に、2018年には幹部の辞任問題や利益相反ポリシーの強化が話題に上がりました。

日本支部と国際的な提携

2014年に設立されたコクランジャパンは、国内でのコクランレビューの作成支援や医療政策への寄与を目指しています。また、世界保健機関（WHO）との提携により、国際的な保健政策への影響を強めています。コクランとウィキペディア財団の間の提携も、インターネット上での医療情報の質を向上させるための重要な取り組みです。

結論

コクランは、科学的根拠に基づいた医療情報の提供において不可欠な存在です。世界中の研究者や医療従事者が信頼を寄せるこの組織は、今後も根拠に基づいた医療実践の普及をリードし続けるでしょう。

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