コケットリー

コケットリー（coquetry）またはフラーティング（flirting）とは、女性特有の魅力的ななまめかしさを指す言葉です。その語源はフランス語の「coq」（オンドリ）に由来します。社会学においては、コケットリーは男女間の権力関係における女性の戦略的な行動と捉えられており、特に女性が男性に対して示す媚態として研究されてきました。

社会学者ゲオルク・ジンメルは、コケットリーを社会化の形式の一つとして分析しました。彼は、事物の「魅力」は、手に入りそうで入らない、イエスかノーか分からない曖昧な状態から生まれると述べています。コケットな女性は、誘惑と拒絶を同時に提示することで、男性に所有と非所有の狭間を揺れ動くような心理状態を与え、彼らを惹きつけます。この曖昧さが、男性の欲望を掻き立てる要因となるのです。

また、フランスの社会学者ルネ・ジラールは、コケットリーを欲望の理論として定式化しました。ジラールの理論では、人間の欲望は模倣によって生じるとされ、コケットリーは、他者（主に男性）の欲望を惹きつけ、自らの価値を高める戦略として機能します。

魅力的な肉体を持つ女性は、異性愛の男性に対してエロティシズムの側面で優位に立ちます。男性が彼女の肉体を欲するほど、彼女の優位性は増しますが、同時に、男性がその障害の大きさに尻込みし、彼女から離れてしまう可能性もあります。そのため、女性は男性に対する優位を保つために、自らを完全に男性の所有物とはしない範囲で、男性の欲望を刺激するような外見や振る舞いを工夫します。彼女の肉体の価値を誇示することで、男性の関心を引きつけ、彼らを魅了しようとするのです。

コケットリーは、本来、女性が戦略的に利用する行動ですが、男性が女性にコケットリーを強要したり、女性の意図を超えて勝手に媚態と解釈し性的な行動を求めると、セクシャルハラスメントとなります。コケットリーは、あくまでもコミュニケーションの一環として、相互の同意に基づいた関係性の中で成立するべきです。

コケットリーに関連する行動としては、アイコンタクトや微笑みが挙げられます。また、ツンデレのように、相反する態度を交互に見せることも、コケットリーの一つの現れと言えるでしょう。

参考文献
Georg Simme (1917). Grundfragen der Soziologie. Geschichte der Malerei., 101. Berlin; Leipzig: : G. J. Göschen.
ゲオルク・ジンメル 著、清水幾太郎 訳『社会学の根本問題 個人と社会』岩波書店、1978年。

関連項目
アイコンタクト
微笑み
* ツンデレ

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