コスタ・アトランチカ

マーガレットビル・アット・シー・アイランダー：イタリア生まれのクルーズ客船の軌跡

マーガレットビル・アット・シー・アイランダーは、現在マーガレットビル・アット・シー社が運航するクルーズ客船です。しかし、その歴史は、コスタ・クルーズ社で「コスタ・アトランチカ」として活躍した時代まで遡ります。

誕生と華麗なる航海

コスタ・アトランチカ級の1番船として、2000年6月30日、フィンランドのクヴァルネル・マサ造船所で建造されました。総工費3億7500万ドルという巨額の投資を反映した、豪華な客船です。1057室もの客室を備え、その多くは海側に面した贅沢な造りとなっています。竣工後すぐに東地中海クルーズに就航し、多くの乗客を魅了しました。

環境にも配慮した設計が特徴で、主機にはNOx排出量を低減させたヴァルチーラ9L46D型ディーゼルエンジンを採用。イタリア船級協会（RINA）の厳しい新環境基準を満たした最初の船舶の一つとなりました。さらに、各デッキにはイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の作品名「La Strada」、「La Dolce Vita」などが冠されており、イタリア文化へのオマージュを感じさせます。

コスタ・アトランチカは、その成功を受け、2003年には同型船のコスタ・メディタラネアが建造されました。さらに、カーニバル・クルーズ・ライン向けにもほぼ同型船が4隻建造されるなど、その設計は高く評価されました。

新型コロナウイルスと長崎港での闘い

2020年、世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、コスタ・アトランチカにも襲いかかります。1月29日、長崎港に入港した同船は、乗組員1名の感染が確認され、世界的な検疫強化により出航が困難となる事態に陥りました。

長崎県、長崎市、三菱造船、そして長崎大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、厚生労働省DMAT事務局、自衛隊、地元医師会、長崎大学病院など、多くの機関や市民が協力し、感染拡大防止と乗組員の健康維持に全力を尽くしました。インターネット上にはデマ情報も流れていましたが、関係各所は連携し、乗組員の検体採取、治療、生活支援を行いました。船内の清掃には、加速化過酸化水素が使用されるなど、感染対策にも最先端の技術が投入されました。

約1ヶ月の闘いの末、船内の陽性者はゼロとなり、5月31日、乗組員126名（フィリピン、インド、インドネシア、中国など多くの国籍の乗組員）を乗せ、フィリピン・マニラに向けて出港しました。乗組員の多くは帰国、または治療のため下船し、この出来事は、国際的な協力と日本の医療体制の能力を世界に示すものとなりました。

新たな航海へ

コスタ・アトランチカは、2023年10月16日にマーガレットビル・アット・シー社に売却され、「マーガレットビル・アット・シー・アイランダー」として新たな航海をスタートさせました。その歴史と経験、そして困難を乗り越えた強さを胸に、未来の海を航海し続けることでしょう。

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