コスモス212号

概要

ソ連が推進した宇宙開発計画であるソユーズ計画において、無人での宇宙船運用技術、特に軌道上での自動ドッキング能力を検証するために打ち上げられた試験機の一つが、コスモス212号（ロシア語表記ではКосмос 212）です。このミッションは、後の有人宇宙飛行における重要な技術基盤を確立することを目的としていました。

ミッション詳細

コスモス212号は、1968年4月14日協定世界時（UTC）の午前10時00分に地球軌道へと投入されました。本機の主目的の一つは、軌道上での完全自動化された宇宙船間ドッキングの実証でした。打ち上げ翌日の1968年4月15日、事前に軌道に乗っていた同系列の無人試験機であるコスモス213号との間で、自動ドッキングが実行され、成功裏に完了しました。これは、将来的な宇宙ステーション建設や、複数機による軌道上活動において不可欠となる技術の重要な一歩となりました。

科学観測

宇宙船としての技術開発や試験と並行して、コスモス212号は科学的なデータ収集もミッションの一部としていました。具体的には、地球を取り巻く高層大気の状態、地球圏外の宇宙環境、そして地球そのものに関する様々な科学観測を実施しました。これらの観測から得られたデータは、機体に搭載されたマルチチャンネル・テレメトリー・システムを通じて、地上の受信局へ効率的に送信され、詳細な分析に利用されました。

技術情報

本ミッションに使用された機体は、ソユーズ宇宙船の初期型にあたる「Soyuz 7K-OK」タイプです。機体の質量は6,530キログラムでした。このミッションは純粋な技術試験および科学データ収集を目的としており、搭乗員は乗っていませんでした。

軌道情報

コスモス212号は、地球の周囲を以下の軌道パラメータで周回しました。

近地点高度: 186キロメートル
遠地点高度: 225キロメートル
軌道傾斜角: 51.7度
軌道周期: 88.75分

これは比較的低高度の地球周回軌道であり、技術試験や地球観測に適したものでした。

ミッション完了と帰還

軌道上での所定のミッション、特にコスモス213号との自動ドッキング試験や科学観測を終えた後、コスモス212号は地球への帰還シーケンスを開始しました。着陸は1968年4月19日協定世界時（UTC）の午前8時10分に成功しました。自動ドッキングを行ったコスモス213号もほぼ同時期に帰還しており、これら二機の無人宇宙機は共にソビエト連邦の領土内に無事軟着陸しました。

識別情報

この宇宙機およびミッションには、国際的な識別子としてNSSDC ID 1968-029Aが付与されています。これは、世界の宇宙活動記録において、この飛行を特定するための公式な番号として参照されます。

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