コスモス359号

コスモス359号

コスモス359号（ロシア語: Космос-359）は、1970年にソビエト連邦によって開発・運用された無人宇宙機です。本来の計画では金星探査を目的としていましたが、軌道変更の失敗によりその目的を達成できず、ソ連の打ち上げ失敗や機密性の高い衛星に慣習的に付けられる名称である「コスモス衛星」の一つとして分類されることになりました。

計画の背景と目的

ソビエト連邦は、1960年代から70年代にかけて、米国との宇宙開発競争の一環として金星探査を精力的に行っていました。金星は地球に最も近い惑星の一つであり、その環境や大気組成の解明は科学的に非常に重要視されていました。コスモス359号も、このベネラ計画（金星計画）の一環として、おそらく金星の大気や表面に関するデータを取得することを主要なミッションとして設計されていたと考えられます。

飛行経過

本機は、1970年8月22日にカザフ・ソビエト社会主義共和国（現在のカザフスタン）にあるバイコヌール宇宙基地から、ソ連が開発した中型ロケットであるモルニヤロケットによって宇宙へ打上げられました。当初の計画では、ロケットの最終段によって一旦、地球を周回する宇宙待機軌道に投入された後、改めてロケットを噴射し、金星へ向かう惑星間遷移軌道に乗る予定でした。

しかし、待機軌道からの軌道変更シーケンスを実行する段階で問題が発生しました。金星へ向かうためのロケット噴射が正常に行われず、推力が計画通りに発生しなかったのです。その結果、探査機は地球周回軌道から離脱して金星へ向かうことができず、当初想定していた軌道とは異なる、地球を周回する楕円軌道に留まることとなりました。

金星探査機としてのミッションを継続することが不可能となったため、この失敗した探査機には「コスモス359号」という名称が与えられ、以後の追跡や情報公開は限定的なものとなりました。

飛行の終焉

軌道変更に失敗し、地球周回軌道に留まっていたコスモス359号は、打上げからおよそ2ヶ月半が経過した1970年11月6日、地球の大気圏に再突入し、その短い飛行を終えました。

同型機ベネラ7号との関連

コスモス359号は、本機の打上げのわずか7日前の1970年8月15日に打上げられ、史上初めて金星表面への軟着陸を成功させたソ連の金星探査機、ベネラ7号と基本的な設計を共有する同型機であったと考えられています。このことから、コスモス359号もまた、ベネラ7号と同様に、金星の大気圏突入に耐え、表面への着陸を目指すための着陸機を備えていた可能性が高いと推測されています。もし計画通りに金星へ到達していれば、ベネラ7号に続く、あるいはベネラ7号と並行して金星探査を行う重要なミッションとなるはずでした。

このように、コスモス359号はソビエト連邦の金星探査計画において、技術的な課題に直面し、当初の目的を達成できなかった事例として記録されています。しかし、その失敗は後の宇宙開発における貴重なデータとなり、ソ連のその後の金星探査（ベネラ計画）に活かされたと考えられます。

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