コスモス482号

コスモス482号

コスモス482号（Космос-482）は、1972年に旧ソビエト連邦によって開発・打上げられた宇宙探査機です。本来は金星探査計画の一環として、金星を目指す軌道に乗せる予定でしたが、打上げ後の軌道投入段階で問題が発生。目的を達成できず、汎用的な「コスモス衛星」の一つとして分類されることになりました。

飛行と失敗

この探査機は、1972年3月31日にバイコヌール宇宙基地からソユーズロケットに搭載されて宇宙へ送り出されました。一度、地球の周りを回る宇宙待機軌道に入った後、金星への軌道へ移行するためにロケット噴射を行う計画でした。しかし、この金星遷移軌道へ移るためのロケット噴射を行った際に、機器の異常などが生じたとみられ、地球周回軌道からの離脱に失敗しました。

この失敗により、衛星とロケットの構成要素は4つの破片に分裂しました。このうち2つは、失敗からわずか48時間以内に地球の大気圏に再突入しました。残りの2つは、比較的高度が高い210 kmから9800 kmに及ぶ長大な楕円軌道に投入されてしまいました。

地上への影響と姉妹機

コスモス482号の失敗に関連して、1972年4月3日には遠く離れたニュージーランドのサウスランド地方に、直径約38センチメートルのチタン合金製球形タンクが複数落下する出来事がありました。これらの物体は、失敗したコスモス482号探査機の一部である可能性が高いと考えられています。

興味深いことに、コスモス482号が打上げられるわずか4日前には、姉妹機にあたるベネラ8号が打上げられています。対照的に、ベネラ8号は順調に飛行を続け、1972年7月には無事金星の大気圏に突入して着陸に成功。金星表面からの観測データを地球へ送信するという成果を収めました。

その後の軌道と将来予測

コスモス482号は、軌道上で探査機の本体部分と、金星表面への降下を目指していた着陸機部分が分離したと考えられています。探査機の本体部分は、その後軌道を徐々に下げ、打上げから約9年後の1981年5月5日に地球の大気圏へ再突入し、消滅しました。

一方、着陸機部分は、それから50年以上にわたり、地球を周回する楕円軌道をさまよっています。この着陸機は、直径約1メートル、重量約495キログラムの構造物で、金星の過酷な環境（高圧・高温）に耐えるための堅牢な耐熱構造を備えています。この頑丈な構造のため、大気圏突入時に完全に燃え尽きず、一部が地上に落下する可能性が高いと予測されています。現在の軌道計算によると、この着陸機は2025年5月頃に地球大気圏へ再突入する可能性が高いと見られています。

コスモス482号は、宇宙開発における予期せぬ事態と、その結果として生じる長期的な影響を示す事例として、現在もその着陸機の行方が注目されています。

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