コソボ憲法

コソボ憲法（2008年）

コソボ憲法は、2008年6月15日に施行されたコソボ共和国の憲法です。それ以前は、国際連合安全保障理事会決議1244に基づき、2001年に批准された暫定憲法によって統治されていました。この暫定憲法は、コソボの暫定統治機構を定め、国際連合事務総長特別代表に最終決定権を留保していました。

セルビア政府はコソボを自国の主権下にある領土とみなし、コソボの独立を認めていません。そのため、セルビアはコソボ憲法を承認していません。この主権をめぐる問題は、20世紀末のユーゴスラビア紛争に端を発しています。

2008年憲法の概要

新憲法の草案は2008年4月に作成されました。その条項の多くは、コソボの少数民族に特別な権利を付与し、すべてのコソボ市民にとってより安全な環境を提供することを目的としたアハティサーリ案に基づいています。

コソボ憲法は2008年4月9日に批准され、6月15日に施行されました。国際連合安全保障理事会は、国際連合コソボ暫定行政ミッション（UNMIK）の任務終了を決定していませんが、UNMIKはその後もコソボに駐留を続けています。

新しい憲法の効力は、コソボのセルビア人地区には及んでいません。したがって、コソボ憲法が実際に効力を持つのは、アルバニア人が多数を占める地域、すなわち事実上独立したコソボの地域に限られています。

前文の意義

コソボ憲法の前文は、コソボの将来に関する重要な指針を示しています。

『我ら、コソボの人民は、コソボの未来を、自由で民主主義の平和を愛する国で、全ての市民の故郷となるべきものとすることを決定した; 全ての市民の権利と、全ての市民の法の下の自由と平等を保障する、自由な市民の国家の建設を目指す; 経済的に安泰で、社会的に成功したコソボ国家を目指す; 善隣関係を築き、隣国と協力することによって、地域とヨーロッパ全域における安定に寄与するコソボ国家となることを信ずる; 世界の平和を愛する国々の品位ある一員たるコソボ国家となることを信ずる; 欧州・大西洋統合の進行に完全に加わるコソボ国家となることを目指す; 我らは、厳かにコソボ共和国憲法を認める。』

前文ではさらに、コソボ共和国がいかなる他国または他国の一部に対しても領土的野心を持たず、統合を追求しないことを明記しています。これは、民族統一主義（特に大アルバニア主義）の可能性を否定する明確な意思表示です。

憲法はまた、コソボを「宗教的信仰に関して中立な」世俗国家と規定しています（第8条）。憲法は全体で14章、162条から構成されています。

歴史的背景

コソボの憲法制定に至るまでには、長い歴史的経緯があります。

1913年: セルビアがロンドン条約に基づきコソボにおける主権を獲得。
1918年: ユーゴスラビア王国が成立し、コソボは同王国の一部となる。
1946年: セルビアの枠内で「コソボ＝メトヒヤ地域」の自治が認められる。
1963年: ユーゴスラビア憲法がコソボ・メトヒヤをセルビア人民共和国内の自治州として承認。
1968年: 州の名前が「コソボ」に改称。
1974年: 「1974年のコソボ憲法」が制定され、コソボ初の憲法となる。ユーゴスラビア連邦憲法は、コソボとヴォイヴォディナの両自治州に共和国と同等の権利を認める一方で、両自治州が連邦およびセルビアの一部であると規定。

1980年代、アルバニア人によるコソボの共和国昇格要求に対し、セルビアは1990年に新しい共和国憲法を批准し、自治州の呼称を「コソボ・メトヒヤ」に戻しました。これにより、コソボが1974年以降に獲得した自治権は大幅に縮小されました。

これに対し、コソボ州議会は1990年7月2日に独立を宣言。この宣言は、コソボがユーゴスラビアの枠内でセルビアから分離し、アルバニア人がユーゴスラビア憲法で定められた「民族」であるとして、その自決権を主張するものでした。しかし、この宣言は1991年にユーゴスラビア憲法裁判所によって違憲と判断されました。

1990年7月5日、セルビアはコソボ議会と政府の解体をもって独立宣言に対抗。同日、コソボ共和国はセルビアからの分離とコソボ憲法を採択しました。

もう一度検索