コソボ治安維持部隊

KFOR（コソボ治安維持部隊）とは

KFOR（Kosovo Force、コソボ治安維持部隊）は、北大西洋条約機構（NATO）が主導する国際安全保障部隊であり、コソボに駐留しています。1999年6月10日に採択された国連安保理決議1244に基づき、コソボ紛争後の治安維持を目的として組織されました。

設立の背景

コソボ紛争は、当時のユーゴスラビア連邦共和国（セルビア共和国統治下にあったコソボ・メトヒヤ自治州）における民族間の対立が激化したものでした。紛争終結後、国際連合コソボ暫定行政ミッション（UNMIK）が暫定行政を担う一方で、NATO指揮下のKFORが治安維持を担当することになりました。

ユーゴスラビア連邦共和国は、後に国家連合セルビア・モンテネグロとなり、2006年にはモンテネグロが独立。セルビアも独立しましたが、コソボは2008年2月17日に独立を宣言しました。しかし、セルビアなどはコソボの独立を承認しておらず、多数派のアルバニア系住民と、コソボ北部を中心に暮らすセルビア系住民との間には依然として対立が残っています。

組織と目的

KFORの司令部はコソボの中心都市であるプリシュティナに置かれています。2006年4月時点での司令官はイタリア陸軍中将ジュゼッペ・ヴァロットであり、兵力は約16,000人、参加国は36ヶ国に及びます。

KFORの主な目的は、以下の通りです。

停戦の維持、ユーゴスラビア軍及びセルビア治安部隊のコソボからの撤退の確保
アルバニア系住民の武装組織コソボ解放軍（UÇK）の武装解除
治安秩序の維持

編成

KFORは、以下の4つの区域に分割され、各区域に複数の国から派遣された部隊が配置されています。各担当区域にはリーダー国が配置されています。

中央部
リーダー国：チェコ
担当国：フィンランド、アイルランド、ラトビア、スロバキア、スウェーデン
主な都市：プリシュティナ
北部
リーダー国：フランス
担当国：ベルギー、デンマーク、ギリシャ、ラトビア、ルクセンブルク、モンゴル、モロッコ
主な都市：ミトロヴィツァ
東部
リーダー国：アメリカ合衆国
担当国：アルメニア、ギリシャ、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、ウクライナ
主な都市：ウロシェヴァツ（フェリザイ）
南西部
リーダー国：イタリア
担当国：アルゼンチン、オーストリア、アゼルバイジャン、ブルガリア、ジョージア、ドイツ、ハンガリー、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スイス、トルコ
主な都市：プリズレン

これらの担当区域別の治安維持部隊とは別に、以下のような特別任務部隊も存在します。

MSU：憲兵による準軍事の警察部隊で、重武装の犯罪者検挙やテロ対策を担い、KFOR本体の任務を支援します。
* KTM：KFOR司令部下で軽武装の緊急行動部隊で、中央部区域の任務も部分的に担当します。

治安の現状と課題

コソボ紛争後、KFORの駐留とアルバニア系主導の統治により、アルバニア系住民への迫害は減少しました。しかし、非アルバニア系住民、特にセルビア系住民の拉致や虐待、殺害事件も発生し、2004年には大規模な迫害事件（コソボ暴動）も起きました。そのため、セルビア本土などへ逃れたセルビア人のコソボへの帰還は進んでいません。

セルビア人の中には、KFORやUNMIKの支配下で発生した事件や、1999年のNATOによるセルビア空爆に対する根強い不信感を持つ人々もいます。

2023年現在、コソボ全土ではアルバニア系住民が多数を占めますが、セルビアに近い北部地域ではセルビア系住民が多数派の地域もあります。セルビア系住民は自治権拡大を要求していますが、コソボ政府はこれを受け入れていません。2023年5月には、北部4市でセルビア系住民が投票をボイコットした選挙でアルバニア系の市長が誕生したことに反発したセルビア系住民がデモを行い、KFOR部隊との間で衝突が発生しました。

KFORの今後の役割

コソボの治安は依然として不安定であり、KFORは引き続き重要な役割を担っています。民族間の対立を解消し、コソボの安定と平和を確立するためには、KFORの活動に加え、政治的な対話や経済発展などの多角的な取り組みが不可欠です。

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