プリズレン

プリズレン：歴史と文化が交錯するコソボの古都

プリズレンは、コソボ南部に位置する歴史的な都市であり、プリズレン郡の中心都市として知られています。人口は約17万人で、主にアルバニア人が居住しています。プリズレン基礎自治体は、プリズレンの町と76の村々から構成され、その人口は約22万1千人と推定されています。シャール山地の北斜面に位置し、アルバニアや北マケドニアとの国境にも近接しています。

古代から中世の歴史

プリズレンの地には、古代イリュリア人の時代から人が住んでいました。古代ローマ時代には「テランダ」という名で記録されており、5世紀には「ペトリジェン」として言及されています。都市の名前の語源は、古代セルビア語で「要塞」を意味する「Призрѣнь / Prizenj」に由来するとされています。

830年代までブルガリア帝国の支配下にありましたが、1018年に東ローマ帝国に編入され、主教座が置かれました。1072年には、ゲオルギ・ヴォイテの反乱により一時的に支配を受けましたが、その後東ローマ帝国の支配下に戻りました。12世紀末には、セルビア公ステファン・ネマニャによって占領されるなど、支配者が度々変わりました。13世紀には、セルビア人の王、ネマニッチ朝のステファン・ネマニッチによって奪われました。

セルビア王ステファン・ウロシュ2世ミルティンは、プリズレンにリェヴィシャの生神女教会を建立し、セルビア正教会の主教座としました。14世紀には、セルビア王国の宮廷が置かれ、政治的中心地として機能しました。「セルビアのコンスタンチノープル」とも呼ばれ、交易と産業の中心地として発展しました。

オスマン帝国時代

1389年のコソボの戦いの後、オスマン帝国の支配下に入りました。1545年にオスマン帝国に奪取されると、ルメリ属州の一部となり、南北と東西の交易路の要所として栄えました。プリズレンは、オスマン帝国のコソボ州でも有数の大都市となり、アルバニア人の移民が増加しました。

近代

19世紀のプリズレンは、オスマン帝国の属州コソボ州における文化と知識の中心地でした。ムスリム住民が多数を占めるようになり、アルバニア文化の中心地として、アルバニア系コソボ人にとって政治・文化的な首都となりました。1878年にはプリズレン連盟が結成され、アルバニア人の国家統一とオスマン帝国からの独立を目指す民族運動が活発化しました。

20世紀

バルカン戦争中にセルビア軍に占領され、セルビア王国に組み入れられました。第一次世界大戦中はオーストリア＝ハンガリー帝国の占領下に置かれましたが、セルビア軍が奪還しました。第二次世界大戦中はイタリアとアルバニアの軍に占領され、戦後はユーゴスラビア連邦人民共和国の一部となりました。

1998年から1999年にかけてのコソボ紛争では、プリズレン市街は大きな被害を免れましたが、周辺地域では大きな影響を受けました。紛争後、アルバニア系住民が多数を占めるようになり、セルビア系住民やロマは避難しました。

現在のプリズレン

現在、プリズレンはコソボで最も文化と民族的多様性に富む都市とされています。アルバニア系住民に加えて、ボシュニャク人、トルコ人、ロマなどが居住しています。トルコ系コミュニティの影響力が大きく、トルコ語が広く話されています。

経済

プリズレンの経済は、小売業や食料品加工業が中心です。しかし、経済規模が小さく、教育水準の低さ、法的整備の遅れなどが課題となっています。多くの企業や工場が閉鎖され、失業率が高い状況が続いています。近年、大規模小売店舗がオープンするなど、変化も見られます。

プリズレン出身の人物

エディス・タトリ - プロボクサー
アネル・ラスカイ - サッカー選手
* ヴェダト・ムリキ - サッカー選手

プリズレンは、その長い歴史の中で様々な文化が交錯し、豊かな文化遺産を育んできました。民族紛争や経済的課題を抱えながらも、その歴史と文化は今も息づいています。

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