コップ座

コップ座（Crater）

コップ座は、古代ギリシャの天文学者トレミーが定義した48星座の一つであり、夜空において非常に暗い星座として知られています。特に明るい星がなく、3等級以上の星は存在しないため、観察者にはやや認識しづらいものとなっています。しかし、その奥深い歴史や神話を持っており、星座の中でも特異な存在です。

主な恒星

この星座にはいくつかの恒星が含まれ、国際天文学連合（IAU）によって正式な名称が与えられています。

• - アルケス（Alkes）: コップ座のα星であり、4等星に分類されます。この名称はアラビア語で「カップ」を意味し、コップ座にふさわしい名です。
• - WASP-34: 10等星にあたるこの恒星は、IAUの100周年を記念してフィリピンに命名権が与えられ、主星は「Amansinaya」、その周りの太陽系外惑星は「Haik」と名付けられました。
• - HD 98219: 8等星であり、こちらもIAUの100周年記念行事の一環でホンジュラスに命名権が与えられ、主星は「Hunahpu」、太陽系外惑星は「Ixbalanque」と名付けられました。

由来と歴史

コップ座は、少なくとも紀元前1100年頃のバビロニアの星図において、隣接するからす座とともに「ワタリガラス（MUL.UGA.MUSHEN）」の一部として記録されていたと考えられています。イギリスの天文学者、ジョン・ロジャースは、バビロニアの大要『MUL.APIN』において、コップ座やからす座、さらにうみへび座が冥界の神であるNingizzidaを象徴していたという見解を示しています。これにより、うみへび座は冥界の門を示し、からす座とコップ座は死の象徴とされました。この組み合わせは、古代ギリシャやローマへと受け継がれ、ミトラ教でも重要な位置を占めていたようです。

神話の世界

紀元前3世紀、アレクサンドリアの学者エラトステネースやローマの詩人オウィディウスは、コップ座の由来に関する興味深いエピソードを伝えています。アポローンは生け贄を捧げるため、配下のカラスに水を汲みに行くよう命じましたが、カラスは途中で未熟なイチジクを見つけて食べてしまい、アポローンに嘘の言い訳をします。アポローンはカラスの嘘を見破り、彼に渇きの罰を与えることになり、最終的にカラス、コップ、蛇が空に配置されるという話が伝えられています。この物語ではコップがコップ座を象徴しています。

また、エレウサの統治者デミフォンは疫病を止めるために神託を受け、毎年一人の乙女を生け贄に捧げることになりました。彼がくじ引きを通じて乙女を選ぼうとするも、トラブルが発生し、最終的にマストゥシウスの娘が犠牲となるという事件が起こります。この後、マストゥシウスは復讐のために行動し、悪行によって一連の悲劇を招くことになります。この教訓は「悪行からは利益を得られない」というメッセージとして星々の中に残されたのです。

コップ座には、歴史的な背景と神話が共存しており、ただの星座としてだけでなく、人類の文化や信仰がどう関与してきたのかを考えさせられます。

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