ワタリガラス

ワタリガラス（渡鴉）

ワタリガラス（学名: Corvus corax）は、スズメ目カラス科に属する鳥で、英語では「コモン・レイヴン」（common raven）または「レイヴン、レーヴァン」（raven）と呼ばれています。日本での和名「ワタリガラス」は、主に北海道で冬に見られる渡り鳥であることに由来しています。別名として「オオガラス」とも呼ばれ、アイヌ語では「オンネパㇱクㇽ」（老大なるカラス）と言われています。

分布

ワタリガラスは旧北区（ユーラシア大陸全域）と新北区（北米大陸）に広く分布しています。日本では、特に北海道で冬の渡り鳥として観察されており、県内では冬季に多く見かけることができます。

形態

ワタリガラスはハシブトガラスよりも一回り大きく、全長は約60cmです。特徴的なのは、同種のカラスの突然変異により白色の個体も存在することですが、通常は黒色の羽を持っています。

生態

知能

スウェーデン・ルンド大学の研究によると、ワタリガラスは目の前にない食べ物を得るために道具を使用することができることが確認されています。この能力は当初、チンパンジーなど一部の類人猿にしか見られないと考えられていましたが、ワタリガラスも同様の知能を有していることがわかりました。このことは、彼らが将来を見越して行動する能力を持っていることを示しており、これは人間の4歳児に相当するとされています。ベラルーシでは、スノーボードに似た行動も観察されており、彼らの知性の高さが示されています。

文化

英語を含むいくつかの言語では、一般的なカラス（crow）とワタリガラス（raven）を示す語が異なります。普段はカラスが不浄な存在と見なされる一方で、ワタリガラスはしばしば善の象徴とされています。

伝説におけるワタリガラス

北欧神話では、オーディンの使者としてフーギンとムニンという2羽のワタリガラスが登場します。また、9世紀のアイスランドへの入植史では、最初にこの地に到達したフローキ・ビリガルズソンが、目的地を見つけるためにワタリガラスを利用したエピソードが記されています。彼はワタリガラスの飛ぶ方向を確認することで航路を決め、「カラスのフローキ」と呼ばれるようになりました。

文化的な象徴として

イギリスでは、チャールズ2世の命令によりロンドン塔で最低6羽のワタリガラスを飼育しており、「ロンドン塔からワタリガラスがいなくなるとイギリスは滅びる」というジンクスがあります。2006年には鳥インフルエンザから保護するために、彼らは一時的に別の場所に避難されました。ロンドン塔の衛兵の中には「レイヴンマスター」という役職が存在し、ワタリガラスの世話が任されています。

ワタリガラスはブータンの国鳥でもあり、アラスカ州の先住民の中にはワタリガラスをトーテムとする部族も存在します。また、北米の太平洋岸北西部の神話にも登場し、その時はトリックスターとしての側面を持つとされています。

英語圏では、NFLのボルチモア・レイブンズやカールトン大学のマスコットとしても名を馳せており、米軍の軍艦や電子戦機の名称にも使用されています。

文学

「レイヴン」という語は、英語で「黒い髪の色」を意味し、これは日本語の「烏の濡れ羽色」と類似しています。また、ワタリガラスにまつわる作品として、エドガー・アラン・ポーの詩『大鴉』や、『ハリー・ポッターシリーズ』に登場するキャラクターや魔法学校の寮名にも影響を与えています。

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