コッラム

コッラム

コッラム（マラヤーラム語: കൊല്ലം/ക്വയ്ലോണ്、英語: Kollam）は、インド最南端の州の一つであるケララ州に所在するコッラム県の中心都市です。この都市は古くから「クイロン（Quilon）」や「デーシンガナードゥ（Desinganadu）」といった別名でも知られており、その豊かな歴史は多様な呼び名にも反映されています。

歴史的背景

コッラムは、かつてアラビア海に面したインド南西部の沿岸地域であるマラバール海岸において、極めて重要な都市の一つとして繁栄していました。古くは南インドの有力な王朝であったパーンディヤ朝の勢力圏下にあり、海上貿易の中継地として栄えていたと考えられています。

中世においては、遠方からの訪問者も惹きつける都市でした。特に、1275年には著名な旅行家であるマルコ・ポーロがこの地を訪れています。彼はコッラムに滞在し、その周辺地域を旅して見聞を広めたと伝えられており、当時のコッラムが国際的な交流の拠点であったことを示唆しています。

大航海時代に入ると、ヨーロッパ諸国もコッラムの戦略的・経済的重要性に着目し、その支配を巡る争いが繰り広げられるようになります。1517年には、インドへの進出を図っていたポルトガルがこの地に城塞を築き、自らの拠点を確立しました。しかし、ポルトガルの支配は長くは続かず、1661年にはオランダ東インド会社がコッラムを占領します。オランダはこの地を巧みな貿易拠点として活用し、東方貿易ネットワークにおける重要な位置付けとしました。

その後、この地域で勢力を拡大していたトラヴァンコール王国がコッラムを占拠し、一時的にその支配下に置きます。しかし、18世紀末になると、インドにおける覇権を確立しつつあったイギリス東インド会社が介入します。1795年、イギリスはコッラムに対する支配権を確立し、この地はイギリス領インドの一部となりました。

19世紀初頭、イギリスの支配に抵抗する動きが高まる中で、トラヴァンコール王国の大臣であったヴェール・タンピは反乱を企てます。1809年に勃発したトラヴァンコール戦争の一部として、このコッラムの地でも激しい戦闘が発生しました。この「コッラムの戦い」において、イギリス軍はヴェール・タンピが率いる勢力と激突し、最終的にイギリスが勝利を収めることで、この地域のイギリスによる支配はより強固なものとなりました。

このように、コッラムは古代から近代にかけて、様々な王朝やヨーロッパ列強、そして在地勢力の間で支配が移り変わり、激動の歴史を歩んできた都市です。その歴史的背景は、現在のコッラムが持つ多様な文化や遺産に色濃く反映されています。

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