コデックス

コデックス：古代から中世の写本形式

コデックスとは、古代末期から中世にかけて用いられていた冊子状の写本のことです。巻物（ヴォリューム、スクロール）と対比される形態で、ヨーロッパを中心に広く用いられましたが、マヤやアステカ文明でも独自の進化を遂げました。

コデックスの歴史と特徴

コデックスの原型は、古代ローマ人が使用していた蝋板です。複数の蝋板を革ひもで綴じた形状は、後のコデックスの形態を予感させます。1世紀後半には、著作の配布にコデックスが用いられた記録が残っていますが、4世紀頃までは巻物が主流でした。

しかし、コデックスは巻物にはない多くの利点を持っていました。

コンパクトで場所を取らない
特定の箇所を開いて読みやすい
両面を使用できる（パピルスを除く）
表紙で内容を保護できる
持ち運びが容易
背にタイトルを付記できる

これらの利点から、コデックスは徐々に巻物にとって代わり、西欧では4世紀から8世紀にかけて多くの巻物がコデックスに書き換えられました。 書庫での保管のしやすさも、コデックス普及の一因です。 書名をつけるという発想が一般化するまでは、多くの古代の書物は冒頭の数語（インキピット）で識別されていました。

初期のコデックスはパピルスで作られていましたが、破れやすく、エジプトでのみ生産されていたため、耐久性に優れた羊皮紙へと移行しました。

アメリカ大陸のコデックス

ヨーロッパだけでなく、マヤやアステカ文明でもコデックスは用いられていました。 これらのコデックスは、いちじくの木の樹皮などの植物繊維、あるいは鹿の皮を材料とし、両面に白色の石灰を塗って屏風のように折り畳んでいました。

描画には先のとがったものと平たいものの二種類の硬い筆記具が使われ、線描後に鮮やかな彩色が施されました。読み方は基本的には左から右へ、裏返してまた左から右へという構成です。 古典期後期には既に絵文書が存在したと推測されますが、現存するものは後古典期以降のものに限られます。 これらのコデックスには、暦、儀礼、神話、交易や貢納、動植物に関する記述などが含まれています。

著名なコデックス

多くのコデックスには、所在地や所有者に由来する名前が付けられています。有名なものとして、以下のようなものがあります。

アレクサンドリア[[写本]]
アレッポ写本
アミアティヌス写本
シナイ[[写本]]
バチカン[[写本]]
ドレスデン写本
マドリッド写本
ボルジア写本
ヌッタル写本
ナグ・ハマディ写本
* その他多数

これらのコデックスは、歴史、宗教、文化、科学など様々な分野の貴重な情報を伝えており、現代の研究に役立っています。

コデックスと関連する学問

コデックスの研究には、写本学（Codicology：写本の構造的研究）と古文書学（Paleography：字体などの内容的研究）が関わっています。これらの学問を通じて、古代から中世にかけての文化や歴史を深く理解することができます。

コデックスは、単なる写本形式にとどまらず、人類の歴史と文化を伝える重要な媒体です。その歴史と特徴を理解することは、過去への理解を深める上で不可欠と言えるでしょう。

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